特集 スマート農業の普及に向けてNARO Technical Report /No.16/20245NAKATANI Makoto※スマート農業(全般)を担当 農業の現場では、担い手の高齢化が急速に進む中で労働力不足が深刻化しており、農作業における省力・軽労化をさらに進めるとともに、新規就農者への栽培技術の継承を図ることが重要な課題となっています。 このような事態に対して農林水産省では、内閣府とともに実施した戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)等の成果を活用しつつ、スマート農業の社会実装を加速化することを目的に、2019年度より「スマート農業実証プロジェクト」を開始しました。これまで全国217地区(2019年度69地区、2020年度55地区、2020年度補正24地区、2021年度34地区、2022年度23地区、2023年度12地区)において、スマート農業技術を実際の生産現場に導入する大規模な技術実証を行っています。 これを受けて農研機構では、スマート農業の推進を組織の最重要課題の一つと位置付け、本部にスマート農業事業推進室(現:みどり戦略・スマート農業推進室)を設置するとともに、全国にスマート農業コーディネーターを配置して実証試験を支援するなど、社会実装に向けた取り組みを、組織をあげて推進してきました。 本冊子は、このプロジェクトの成果をもとに、現段階でのスマート農業の導入効果を解析したものです。とりまとめにおいては、個別のスマート農業技術の導入効果、営農類型別に見たスマート農業の有効性、さらに、スマート農業の導入シミュレーションと普及方策について整理し、個別の技術が経営の中で体系化され、それが広く横展開していくことをねらいにスマート農業の効果や普及拡大に向けた条件を総合的に示すとともに、スマート農業の導入を検討されている生産者や指導機関の担当者など営農現場の皆さんの参考となる記述となるよう心がけました。 本年(2024年)6月に「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律」が成立しました。この法律は、農業の生産性向上を図るため、スマート農業技術の活用と新たな生産の方式の導入およびスマート農業技術等の開発とその成果の普及促進を通じてスマート農業技術の活用を促進し、農業の持続的な発展と食料の安定供給に資することを目的としています。 本法律では、国が生産方式革新事業活動や開発供給事業の促進に関する基本方針を定めること、また、生産方式革新事業活動を行おうとする農業者等や、先端的な技術の開発供給事業を実施する者が「生産方式革新実施計画」および「開発供給実施計画」を作成し、農林水産大臣の認定を受けることで、様々な支援措置が講じられることが規定されています。このように、政策においてもスマート農業技術の活用促進に向けた取り組みが積極的に進められようとしています。 本冊子が、スマート農業技術活用促進法に基づく各地での取り組みを進めていく上での一助となり、それにより、農業経営の改善とスマート農業の広範な普及に資するものとなれば幸いです。 副理事長中谷 誠特集によせて
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