■ おわりに図3出力 イネウンカAI自動カウントシステム調査用粘着板をフラットベッドスキャナで画像化粘着板払い落し法により調査用粘着板にイネウンカ類を付着させるイネウンカAI自動カウントシステムの概要計数結果のCSVファイルと画像ファイル物体検出モデルの実行入力実行結果から分類クラスごとに計数※1 トビイロウンカ 成虫の体長は概ね4〜5mmで、イネウンカ類の中で最も大型の種。成虫は雌雄ともに脂ぎった褐色をしている。※2 セジロウンカ トビイロウンカよりもやや小型の種。成虫は雌雄ともに背中に白い模様があり、頭部がやや尖ることが特徴。※3 ヒメトビウンカ セジロウンカよりもさらに小型の種。成虫はメスと一部のオスにセジロウンカと同様の背中の白い模様があるが、頭部の尖り具合が弱いことでセジロウンカと区別できる。成虫のオスの多くは背中に白い模様がない。※4 調査用粘着板 B5サイズの防水性の板(例えば、幅180mm □ 長さ250 mm □ 厚さ2mmのアクリル板)に、白色防水紙を貼り付け(四角をセロハンテープなどでとめて容易に外れないようにする)、その白色防水紙上にスプレー式粘着剤を塗布し作成する。※5 ネオコグニトロン 1979年に福島邦彦博士によって提唱された階層構造を持つニューラルネットワークで、人間の視覚野が二種類の神経細胞の働きによって画像の特徴を抽出していることをモデルとしている。※6 YOLO 「You Only Look Once」の略で、「一度見るだけ」という意味を持つ。画像中の物体を高速かつ高精度で検出するためのアルゴリズムで、オープンソースで公開されている。※7 紫峰 農研機構が保有する国内農業系研究機関で初となるAI研究用スーパーコンピューター。従来の多くのスーパーコンピューターとは異なり、主力の演算装置にGPUを用いることで、機械学習や画像解析に適した仕様であることが特徴。1)松村正哉(2017) ウンカ 防除ハンドブック. 農山漁村文化協会, 東京.2)高山智光ら(2022) 粘着板に捕獲したイネウンカ類の自動計数に向けた画像認識技術の検出精度検証. 農業情報研究, vol.30(4), 174-184.3)農研機構プレスリリース(2022-1-13) イネ害虫の発生調査で、専門家の目を持つAIがウンカ類を自動カウント −目視では1時間以上の調査時間を3〜4分に短縮−. https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/rcait/145729.html (参照 2024-10-20)4)農研機構(2023) イネウンカ類の発生調査における粘着板捕獲サンプルを対象としたAI自動カウントシステム標準作業手順書. https://sop.naro.go.jp/document/detail/95 (参照 2024-10-20)NARO Technical Report /No.17/202517 イネウンカ類の発生量調査において、これまでは調査用粘着板1枚に付着した個体数が数千匹を超えるようなイネウンカ類の多発生時には、熟練した専門家であっても調査用粘着板1枚分の識別・計数作業に1時間以上かかることもありました。しかし、イネウンカAI自動カウントシステムを用いれば、認識精度約90%での識別・計数が、調査用粘着板に付着したイネウンカ類の個体数に関わらず5分程度で完了します。したがって、イネウンカAI自動カウントシステムを使うことで、識別・計数作業が大幅に軽労化され、誰でも専門家に匹敵する精度でのイネウンカ類の識別・計数が可能になります。 調査用粘着板の作成から自動カウントプログラムの使い方までの一連の作業手順をまとめた「イネウンカ類の発生調査における粘着板捕獲サンプルを対象としたAI自動カウントシステム標準作業手順書」を公開しました4)。これまでに日本植物防疫協会と九州病害虫防除推進協議会の農薬試験でのイネウンカAI自動カウントシステムの利用が承認され、また農林水産省の病害虫発生予察事業における本システムの活用も期待できることから、公設試験研究機関、病害虫防除所、民間企業(農薬メーカー)での本システムの利用が広がりつつあります。本システムの利用拡大に伴う使用上の注意点の追加や、自動カウントプログラムの改良など、必要に応じて上記の標準作業手順書の改訂を行ってまいります。本システムがイネウンカ類の的確で簡便な発生予察と防除に貢献できれば幸いです。(植物防疫研究部門 基盤防除技術研究領域海外飛来性害虫・先端防除技術グループ)(基盤技術研究本部 農業情報研究センター AI研究推進室 画像認識ユニット 兼 九州沖縄農業研究センター暖地畑作物野菜研究領域 施設野菜グループ)特集 AIの農業現場への実装をめざして □自動カウントプログラム用語解説̶参考文献̶
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