農研機構技報No.7
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連続直がけ被覆が茶葉収量に及ぼす影響※供試品種は同一茶園の12~14年生で、2015年の中切り後の収量を調査(反復なし)。図3「せいめい」かぶせ茶および各種碾茶の製茶品質、色相角度、化学成分含量  (農研機構, 2020より作成) 表2*1:製茶品質は「やぶきた」を100とした場合の相対値。 *2:色相角度(h)は測色色差計で計測し、化学成分含量は高速液体クロマトグラフィーで測定した。品種名製造法 製茶品質*1 色相角度*2(h)試験地(実施年)せいめいやぶきたせいめいやぶきたせいめいやぶきたせいめいやぶきた農研機構・枕崎(2016-2018)京都府(2016)鹿児島県(2018)佐賀県(2018)かぶせ茶碾茶:碾茶機碾茶:新碾茶ライン碾茶:釡炒り製111.4 110.5 125.5 121.6 118.9 117.0 127.2 125.8 117100100100105100114100 化学成分含量(g/100g)*2テアニンその他遊離アミノ酸4.09 2.77 4.99 3.34 3.56 2.34 2.87 1.55 1.66 1.33 2.24 2.08 1.42 1.39 1.58 0.97 カテキン類カフェイン11.66 12.50 9.88 10.75 11.74 13.17 11.46 14.86 3.43 3.80 3.09 3.32 3.72 3.98 4.02 4.00 2016年2017年2018年せいめいやぶきたせいめいやぶきた0100200300400500600せいめいやぶきた収 量(kg/10a)二番茶一番茶397380293297449406491239596555500.8408(農研機構, 2020より作成)ぶきた」より高い数値を示し、緑が濃く鮮やかで色合いが優れることが示されました。また、化学成分含量は、「せいめい」は「やぶきた」に比べ、うま味に寄与する遊離アミノ酸、特にテアニン含量が多く、渋みや苦みに関与するカテキン類やカフェイン含量が少ないことが確認されました。この化学成分含量の特性が、製茶品質の良さに反映されています。「せいめい」と「やぶきた」の碾茶および抹茶を比較した場合、「せいめい」が色合い(図4、図5)5)とうま味に優れます。さらに、鹿児島県南九州市の「せいめい」現地実証茶園で、2019年にトンネル被覆により棚がけ被覆した「せいめい」(図1)を新碾茶ラインで加工し、石臼で挽いて抹茶を作成し、第73回全国お茶まつり(愛知県大会)において茶業関係者および一般消費者に対して試飲を行ったところ、うま味が強く、渋みが少なくて飲みやすいとの高評価を得ました。これらの事から、「せいめい」は抹茶に適した品種として有望であり、広範囲の茶産地で導入できる品種であることが明らかになりました。と二番茶に収量変化はありませんでした。一方、2017~2018年は枝数の増加に伴い、両品種の一番茶収量は増加します。この時、「せいめい」二番茶収量は一番茶収量と差が小さいのに対し、「やぶきた」二番茶収量は大きく減少しました(図3)。この結果は、「せいめい」が「やぶきた」より収量面で被覆栽培の適性が高いことを示します。 次に、「せいめい」と「やぶきた」を直がけ被覆栽培し、かぶせ茶※2および碾茶を加工して、製茶品質、色合いおよび化学成分含量を調査しました(表2)5)。かぶせ茶は農研機構果樹茶業研究部門(枕崎研究拠点)、碾茶機を使った碾茶は京都府茶業研究所、新碾茶ラインは鹿児島県農業開発総合センター茶業部、釡炒り製碾茶は佐賀県茶業試験場で各々試験を行いました。製茶品質を官能審査により調査したところ、碾茶(碾茶機)が「やぶきた」と同等で、他の製茶法では「やぶきた」より優れました。また、色合いを色差計による粉末の色相角度で測定したところ、いずれの製法の場合も「せいめい」は「や16NARO Technical Report /No.7/2020緑茶用新品種「せいめい」 

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