農研機構技報No.7
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品種名ふくむらさきパープルスイートロード201298127194いも収量(kg/a)平均1個重(g)「ふくむらさき」の特性表2注)2009~2011年、2013~2017年の標準黒マルチ栽培における平均値。  アントシアニン色価:生いもからアントシアニン色素(植物の赤色、青色、紫色の素となる成分)を抽出した溶液の色 「べにはるか」の都道府県別作付面積(ha) いも・でん粉に関する資料(農林水産省生産局 2020年8月)より作成図4茨城2,576千葉1,074鹿児島350大分312熊本240その他104「べにはるか」の干しいも図5■ 「べにはるか」の留意点 「高系14号」に比べて表面の皮が剥けやすく、ヤラピン※2が多いので、収穫や洗浄時の取り扱いには注意が必要です。さらに、普及するにつれて明らかになった点として、肉色(いもの中身の色)が白くなるという自然突然変異※3が起こることがあげられます。肉色が本来の黄白色から白肉色に変わっても糖度や食感に差はありませんが、風味に違いがあると感じる方もいるようです。白肉色は外観ではわかりにくいため、気づかずに種いも(次の年の苗を育てる元になるいも)として使うと、白肉色の「べにはるか」を再生産し、増やしてしまいます。したがって、肉色を確認するという種いもの選別作業が非常に重要となります6)。肉色の確認は伏せ込む前に種いもの尾部側の一部を切って行いますが、芽は大部分が頭部から出るため種いもとしての使用には問題ありません。■ 「ふくむらさき」の育成と特徴 「ふくむらさき」7)は、甘味が強く粘質系の黄色サツマイモ「九系255」と、現在食用として最も普及している紫サツマイモ品種「パープルスイートロード」を掛け合わせた品種です。「パープルスイートロード」は、紫肉色という特徴を持ち、いもの外観や収量などの特性は優れていますが、黄肉色の一般的なサツマイモに比べて甘味が不足し、食味の評価は高くありません。そこで、より食味の良い紫肉色サツマイモ品種の育成を目指して、良食味の「九系255」を掛け合わせました。2015年からは農林水産省の農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業も活用しながら育成を進め、2018年に品種登録出願しました(出願番号:33033)。品種名の「ふくむらさき」は、その美味しさで食べた人を幸せな気持ちにしてほしを図りました4)。その後、各産地で様々な呼び名が生まれて定着しており、そのほとんどが商標として登録されています。茨城県の「紅天使」や「紅優甘(べにゆうか)」も「べにはるか」のブランド名の一つです。一方で、品種名である「べにはるか」そのものの知名度が徐々に高まったことにより、品種名をそのまま使用する産地も増えています(ただし、‘紅はるか’と表記されることもあります)。2017年の作付面積の合計は4,656haであり、最も普及している茨城県では2,500haを超えています(図4)。これは、茨城県で多く作られる「蒸し切り干しいも」(干しいも)(図5)の原料としても「べにはるか」の評価が高く、干しいも用品種の「タマユタカ」に置き換わりつつあるためです5)。20NARO Technical Report /No.7/2020高糖度サツマイモ品種

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