農林8号農林27号農林23号農林8号農林22号その他農林22号農林25号農林21号RK97-14農林28号農林18号その他その他その他その他農林17号農研機構育成品種円グラフ(内側)沖縄県育成品種その他鹿児島県と沖縄県の収穫面積における品種構成(両県の「平成30/31年期さとうきび及び甘しゃ糖生産実績」を基に作図)図1鹿児島県9,436ha沖縄県13,145ha 最も代表的な品種は1990年に育成された「農林8号」で、ピーク時には国内で栽培されるさとうきびの約半分を占めていました。特に南西諸島の最北に位置する種子島では、2004/05年期には収穫面積のほぼすべて(98.1%)を「農林8号」が占め、その後も2015/16年期まで約80%以上を維持するなど、長期にわたり主力品種となっていました。■ はじめに 製糖用原料として利用されるさとうきびの主な生産地域は、鹿児島県と沖縄県の島々からなる南西諸島です。南西諸島では約7割の農家がさとうきびを栽培しており、重要な基幹作物となっています。さとうきびの栽培には、主に2~3月頃を中心に植え付ける「春植え」と、8~9月頃を中心に植え付ける「夏植え」があり、春植えは約1年、夏植えは約1年半の栽培期間を経て、糖度が高まる冬季(12~3月頃)に収穫します。そして、収穫した後の株から生えてくる萌芽を育てて再び1年後に収穫するという「株出し栽培」が行われる点がさとうきび栽培の大きな特徴です。通常、株出し栽培を繰り返すと収量が減少していくため、株出し回数は2回程度が推奨されています。 南西諸島ではさとうきびほ場の約7割が株出し栽培であり、株出し栽培での多収の実現が求められています。本稿では、さとうきび野生種(Saccharum spontaneum L.)を育種に活用して、株出し栽培で重要となる収穫後の株からの萌芽性(株出し萌芽性)を飛躍的に改良した新品種「はるのおうぎ」1)について紹介します。■ さとうきび品種と生産環境の変化 農研機構では、九州沖縄農業研究センター種子島研究拠点においてさとうきびの品種開発を行っています。糖度の高さ(高糖性)とともに株出し栽培での多収性を重視した選抜を行い、これまでに多くの品種を育成してきました。現在、鹿児島県と沖縄県で栽培されているさとうきびの、それぞれ約73%、49%が農研機構の育成品種です(図1)。服部 太一朗HATTORI Taiichiro26株出し多収性さとうきび新品種「はるのおうぎ」NARO Technical Report /No.7/2020特集 品種開発Ⅱ 6
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