農研機構技報No.7
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再Fix時間の測定結果図2コンパスを設置したロボットトラクタと方位角の測定結果図3短基線長基線長基線長基線短基線短基線低価格GNSS動的条件静的条件対照機04812再Fix時間(秒)2.52.93.63.99.610.1トラクタ走行時間 (秒)020406080100200180160140120方位角 (°)-360-270090180-180-90270360対照機ZED-F9P+ANN-MB-00ANN-MB-00対照機 Vector 113キャビン天面ANN-MB-00プリケーションが内蔵され容易に方位角が得られることから追加評価しました。2組の低価格GNSS(アンテナはu-blox社製ANN-MB-00)をアンテナ間距離92.5cmでロボットトラクタに搭載し、RTK-MBアプリケーションを実行し、走行中の方位角出力を市販のGNSSコンパス(Hemi-sphere社製Vector113)で測定した方位角と比較しました。 低価格GNSSのアンテナの設置状況と基準機とした市販GNSSコンパスの設置状況を図3に示します。基準機の出力する方位角に対する低価格GNSSのRTK-MBアプリケーションから出力された方位角のRMSEは約0.6°で、方位を高精度に計測できることがわかりました。■ロボット農機への適用性 ロボットトラクタの航法装置は、GNSS装置の位置情報およびGNSSコンパスとIMUの車体姿勢情報(進行方位角など)などを利用し、予め設定された目標走行経路に沿うように車両の操舵量などを制御し自動走行を行います。そこで、低価格GNSSおよび対照機を航法センサとしてロボットトラクタに搭載し、耕うんと大豆播種の自動作業を実施した際の目標経路に対する横方向偏差(Off-Track Error、OTE)などを検証しました。 図4に示す経路で耕うん(直進部作業速度0.6m/s)および大豆播種(同0.9m/s)の自動作業を短基線および長基線条件で行いました。その結果、耕うん、播種作業ともに基線長に依らず横方向の偏差は3cm以下であり、低価格GNSSは対照機と同程度の走行精度が得ら■RTK初期化および再Fix時間 ロボット農機などの航法センサとしての利用場面では、日々の作業開始時にGNSS装置の電源投入からRTK- Fix状態となって高精度測位を開始するまでの初期化時間(Time to First Fix, TTFF)と、何らかの障害で一時的に測位が不能となった後に障害が除去されてから再度RTK-Fix状態に復帰するまでの時間(再Fix時間)が重要となります。そこで、低価格GNSSの電源投入後の状態を再現するUBX-CFG-RSTコマンドを低価格GNSSへ送信してから高精度測位を開始するまでの時間でTTFFを、アンテナと受信機間に設置した高周波リレー(パナソニック社製、ARD10012)によって一時的な電波の受信障害を再現し、非RTK-Fix状態となってから再びRTK-Fix状態に復帰するまでの時間で再Fix時間を計測しました。 その結果、低価格GNSSのTTFFは約10.4秒、再Fix時間は約3秒でした。特に再Fix時間については、対照機の約10秒よりも短時間であること(図2)、長基線条件と動的(走行)条件においても1秒程度長くなるだけで初期化に失敗することも確認できませんでした。冒頭(はじめに)で触れた1周波GNSSを利用した農機用航法センサの開発事例では、移動局の電源投入後の初期化時間が104秒、電波遮断後の再Fix時間が91秒で初期化の失敗も6~10%程度あったことから、多周波対応の供試低価格GNSSの優位性が示される結果となりました。■GNSSコンパスによる方位角の計測精度 GNSSコンパスとは2組のアンテナと受信機を利用しアンテナ間の基線ベクトル演算により真北を基準とした絶対方位角を計測する手法です。低価格GNSSは2組を使用することへのハードルが低いと考えられ、RTK-MBア32NARO Technical Report /No.7/2020低価格GNSS装置の性能評価

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