自動化農作業でのGNSS航法精度図5各試験区のトラクタ走行経路図4短基線長基線長基線長基線短基線短基線低価格GNSS大豆播種耕うん大豆播種対照機0.000.010.030.040.02o-track error（OTE）（m）0.0240.0280.0240.0280.0200.030本部地区HCほ場航法GNSS：ZED-F9P+JCA228 P326+A52走行速度：0.9m/s 基線：500m、9kmB地区ロ2ほ場走行速度：2.0m/s基線：200m、9kmB地区ロ所内道路航法GNSS：ZED-F9P+JCA228基準コンパス：Vector113 走行速度：1.0m/sB地区ロ2ほ場航法GNSS：ZED-F9P+JCA228走行速度：0.6m/sR=6m有人走行TTFF測定有人走行方位角測定耕うんOTE測定大豆播種OTE測定目標経路に対するズレ幅れました（図5）。大豆播種の直進作業区間の隣接行程間隔は、設定条間30cmに対して低価格GNSSでは28.9±0.6cm、対照機では30.9±1.1cmとなりました。直進性も高く、作業行程端での旋回なども円滑に行われ、低価格GNSSは耕うんや播種などの自動作業に十分適用可能と考えられました。●■おわりに 現在、入手可能な低価格の多周波対応GNSS装置の性能評価と農用車両への適用可能性を検証しました。その結果、低価格GNSSは、対照機や1周波のRTK-GNSS受信機と比べて、迅速な初期化および再Fixが可能で、同程度のRTK測位精度を得られることが明らかとなりました。ロボットトラクタの航法センサとして利用した自動作業においても行程間隔が均一で良好な作業結果が得られたことから、農用車両の航法システムを構成する航法センサとして十分に利用可能であることがわかりました。 高精度なRTK測位に欠かせない位置補正情報の配信サービスについては、携帯電話会社による固定基準局の位置補正情報の配信サービスが始まっており、VRSに比べてランニングコストが安く、自前の固定基準局のような初期投資をしなくても利用可能な環境が整いつつあります。固定基準局の位置補正情報を用いた場合、利用地域によっては基線長が長くなる場合も想定されますが、本検証では長基線測位においても水平方向については十分な測位精度が得られる可能性が示されました。本試験では1機種のみの検証ですが、試験方法はISOの動的試験法3）4）に準じて実施し、信頼性のある情報が得られたものと認識しています。 以上のように、高精度かつ安定した測位が可能な低価格GNSSに加え、位置補正情報についてもコストを抑えた利用が可能な時代となったことで、農業分野における高精度GNSSの活用の範囲がますます広がっていくことが期待されます。（農業技術革新工学研究センター 高度作業支援システム研究領域）用語解説̶※1 GNSS （Global Navigation Satellite System） 全球測位衛星システム。GPS、GLONASS、Galileo、準天頂衛星（QZSS）などの衛星測位システムを含む。※2 RTK （Real Time Kinematic） GNSSの測位方式の一種で、基準局からその地点の位置座標と観測情報を移動局に送信し、基準局の情報と移動局の観測情報を利用してリアルタイムに高精度な移動局の位置情報を求める方式。※3 ENU（East, North, Up）座標 地表面付近のある点を原点として、天頂方向（垂直線の上方向）をＺ軸、これに直角に東方向（東西）をX軸、北方向（南北）をY軸とした座標系。※4 Fix解 RTK測位で求められる測位解。Fix解の精度は0.5～2.0cm程度である。参考文献̶1）中小企業庁（2016） 平成27年度戦略的基盤技術高度化支援事業「小型・低消費電力・高精度で安価な農機用航法センサの研究開発」. 研究開発成果など報告書.http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/portal/seika/2013/160902kinki05.pdf （参照2020-1-15）2）趙元在・林和信（2019） 標準区画向けマルチロボット作業システム. 農業食料工学会誌, vol.81（5）, 270-274.3）ISO（2010） ISO 12188-1 Tractors and machinery for agriculture and forestry - Test procedures for positioning and guidance systems in agriculture - Part 1: Dynamic testing of satellite-based positioning devices.4）ISO（2012） ISO 12188-2 Tractors and machinery for agriculture and forestry - Test procedures for positioning and guidance systems in agriculture ‒ Part 2: Testing of satellite-based auto-guidance systems during straight and level travel.33NARO Technical Report ／No.7／2020
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