わが国における最終エネルギー消費量図1鉱業および建設業 他 1.1%水産養殖業 4.4%製造業43.4%サービス業16.1%運輸23.2%家庭14.4%農業67.9%漁業22.4%林業 5.4%2015~17年 最終エネルギー消費量総量(平均):1,346万TJ農林水産業の最終エネルギー消費量:26万TJ農林水産業 1.8%100%0%資源エネルギー庁 総合エネルギー統計 2015~17年を参考に作成境制御で化石燃料が消費されており、農林水産業における温室効果ガス排出の約30%(農業分野のみでは約11%)を占めています3)。農業分野における脱炭素や省エネルギーの課題を解決するためには、化石燃料の利用削減に取り組む必要があり、そのためには、化石燃料から再生可能エネルギーに置き換えていくことが重要です。■ ヒートポンプシステムを使った 熱エネルギーの利用 再生可能エネルギーというと、太陽光発電や風力発電などによる電気エネルギーを連想されると思いますが、地中熱や地下水熱などの熱エネルギーも、活用が期待される重要な再生可能エネルギーです。熱エネルギーを効率的に集める技術であるヒートポンプシステムによって、地中熱や地下水熱は熱源となる地中や地下水中から汲み上げられ、暖房や冷房、給湯などの用途で利用されており、2000年代以降、導入が進んでいます。ヒートポンプシステムの特徴は省エネルギーであることです。例えば、電気ストーブは投入した電気エネルギーに対して、等倍の熱エネルギーしか得ることができませんが、ヒートポンプシステムでは投入した電気エネルギーに対して、投入したエネルギーの3~6倍の熱エネルギーを熱源から汲み上げることができます(図2)。熱源は、地中や地下水だけでなく、ため池の水のような地表水を使用することもできます。地中や地下水、地表水を熱源にしたヒートポンプシステムは、空気を熱源にするヒートポンプシステムと比較して、効率的に熱を汲み上げて施設に利用できることがこれまでの研究で示されています4)5)。 日本は水資源が豊富であり、農業にも大量の水が使■ はじめに 私たちの快適な生活は、電気や熱などのエネルギーを使うことにより支えられています。化石燃料を消費することで電気や熱が作り出される一方で、二酸化炭素などの温室効果ガス(GHG)が大量に排出され、気候変動問題の主な原因となっています。気候変動問題への関心が高まる中、わが国も、2050年までのカーボンニュートラル実現や再生可能エネルギーの主電源化などに向けた議論が活発になっています。 2015~17年の日本国内における1年間の全産業の最終エネルギー消費量は平均で約1,346万TJ(テラ・ジュール、テラは10の12乗)と報告されています1)。このうち、最終エネルギー消費総量に占める割合が約43%と大きい製造業では、工場からの排熱などの熱を有効に使うことで脱炭素や省エネルギーなどの課題解決に貢献可能と言われています2)。一方、農林水産業では、最終エネルギー消費量全体に占める割合は約2%で、農業はその約68%を占めており、ほとんどが化石燃料の消費に起因しています(図1)。例えば、施設園芸の暖房などの環三木 昂史 後藤 眞宏MIKI TakashiGOTO Masahiro農業用水路から流水熱を取り出す!22NARO Technical Report /No.8/2021
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