デジタル画像と画像分類 図1画像分類物体検出セマンティックセグメンテーション画像撮影撮影画像画像認識リンゴとミカン?AIヒト判断の根拠となる教師データ■ 画像分類 本手法は画像分類のための深層学習モデルですので、まず初めに、適用対象である画像分類について説明します。 ヒトは経験に基づいて画像に写っているものが何であるかを認識することができます。一方で、コンピュータはドローン搭載カメラ、スマートフォン、ウェアラブルカメラ、一眼レフカメラなど様々な画像センサで撮影して得られたデジタル画像を画像処理により、画像の内容に関する判断である画像認識を行います(図1)。画像認識■ はじめに 病虫害による農作物への被害は深刻でその対策を支援するために、AI(Artificial intelligence: 人工知能)を活用した病虫害の自動判別システムの開発が進められています。現在、AIによる画像解析のアルゴリズムに使われている深層学習※1のほとんどは、モデルが学習した特徴や、学習に基づく判断の根拠を説明することが困難です。深層学習の利用場面が拡がる中で、例えば人間の意思決定の参考にする場合など、判断の根拠が必要となるケースが次々と出てきており、判断の根拠を説明可能なAI(Explainable AI: XAI)への社会的要請が強まっています。そこで今回、モデルの判断の根拠として、判定に使用した特徴を可視化できる深層学習モデルを開発しました。 開発した手法は、画像解析における画像の内容に関する判断をする画像認識処理の際の画像分類のための深層学習モデルで、変分オートエンコーダ(Variational Autoencoder: VAE)※2という技術を用いて、学習した特徴を可視化することができます。利用者が判断の根拠を確認できることで、本手法を組み込んだシステム全体の信頼度向上につながるだけでなく、モデルの改良方針の決定にもつながります。さらに、分類の専門家の経験の可視化や、分類の専門家が気づかなかった分類基準の創出にも役立つ可能性があります。 本稿では、バレイショの葉の病気の発症の有無を画像から判定することに応用した事例を紹介しますが、本手法は今後、病虫害の診断に限らず、農業分野を始め根拠が説明できる画像分類モデルが必要な、幅広い分野での活用が期待されます。30NARO Technical Report /No.8/2021ハバラガムワ ハルシャナ 大石 優HABARAGAMUWA HarshanaOISHI Yu判断の根拠を可視化できるAIを開発- 生産者も納得の病虫害診断に活用 -
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