する水深より7cmほど高くなり、田んぼダムを未実施の水田よりも高い水位で7時間程度継続していました。このことにより、調整板を設置した水田では、排水量が抑制され、ピークの排水量が約40%削減されていました。貯留された雨水は、その後、貯留された水量と同じ量がゆっくりと排水されていることがわかります。そのため、田んぼダムを多数のほ場で実施すると、降雨のピーク時に排水路に排水される水量が抑制され、排水路内の水量の急増を抑制する効果が得られました(写真4)。 また、田んぼダムの種類によっては、雨水の用水としての利用率が高まり用水資源の確保という農業面のメリットも期待できます。 田んぼダムの設置の容易性や効果の特徴は、調整板の種類や設置方法によって異なるため、事前に関係者で取り扱いが容易になります。 なお、田んぼダムを実施すると、降雨時に水田の水深が上昇しますが(写真3)、水稲や畦畔に影響が出ないよう、畦畔より低い、水稲生産に支障のない安心できる範囲で水を貯留するように、これら器具のスペックや設置位置について検討する必要があります。■ 地域と一緒に 田んぼダムの効果を実感 田んぼダムにより豪雨時に水田の水深を10cm高くできると、1haの水田で1,000t(1,000m3)もの雨水を一時的に貯留することになります。よって、なるべく多くの方に協力していただいて、広い面積で取り組むと、下流の水路が満水になるリスクや排水機場の稼働の軽減につながります。 実際に、豪雨時の水田の様子を見ると、田んぼダムの調整板を設置した水田では貯留効果を発揮して水位が上昇している様子がよくわかります(写真3)。この時の水田の水深と排水量を観測した結果6)が図2です。調整板を設置した水田では、降雨期間が終わっても高い水深がしばらく継続しており、貯留効果が強化されています。この調査事例では、豪雨時の最大の水田の水深は通常の管理田んぼダム実施による水田の雨水貯留機能の実測例(観測日:2018年6月29日-7月1日)図2調整板なし調整板あり調整板なし調整板あり水田貯留能力が強化● そのときの水田からの排出量をみると、調整板を設置した水田では排水量が制限されるため、通常の水田に比べてピークが抑えられる(ピークカット効果、 部分)● 溜まった水は、降雨終了後にゆっくりと排水される ( 部分)● これにより、下流の洪水被害の軽減効果が期待される● 雨が降ると水田の水深は上昇するが、調整板がない通常の水田ではすぐに水深が下がるのに対して、調整板を設置した水田では深い水深がしばらく保たれ貯留効果が続いている( 部分)40302010(mm/h)(mm)(mm)田面水深 10305070降水量時間(h)田面排水量002448721020降雨時期降雨時期深い水深が継続ピークカット効果ゆっくり排水田んぼダムの効果発揮の様子(観測日:2018年6月29日-7月1日)写真3「田んぼダム」による豪雨対策26NARO Technical Report /No.9/2021
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