農研機構技報No.9
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染が成立します(図4)4)。そこで、複数の土壌改良資材を検討した結果、鉄鋼スラグ※1系資材あるいは生石灰の土壌混和5)6)により菌が土壌中に生き残りにくい環境を構築できることがわかりました。これら資材の中で、飛散しにくいタイプの鉄鋼スラグや生石灰を利用する場合はライムソワーによる散布が適していて、粒状の鉄鋼スラグ資材の場合はブロードキャスターでの散布に向いています(図8)。施用量は、鉄鋼スラグ系資材が300kg/10a、生石灰は100kg/10aを基本としており、鉄鋼スラグ系資材は1回散布すれば3年間は散布が不要ですが、生石灰の場合は毎年で合計3年間は散布が必要なため、コスト的には大きな差はありません。生産者の利用できる散布機や入手できる資材に合わせて資材を選択します。これら資材が必要となる目安は、ほ場の稲地上部での本病の発生状況が「数歩あるくとすぐ見つかる」から「ほ場が真っ黒に見える」ような状態に発生した場合であり、その時の土壌菌量は「中」から「多」に該当する場合がほとんどです(表1)。また、多発生のリスクが高い土壌菌量が「多」のほ場では、鉄鋼スラグ系資材の施用量を多くする必要があり、土壌pHが7.5を超えない範囲での施用が推奨されます。■ 薬剤散布適期連絡システム 土壌改良資材による土壌環境の改善のみでは、本病を制御することは難しいため、薬剤散布による防除が必要です。登録農薬の茎葉散布剤で本病を防除する場合、シメコナゾール粒剤では出穂期21~14日前の8日間、銅剤では出穂期21~10日前の12日間しかありません。この期間内に的確に防除するためには、気象予測精度の高い1km-メッシュ農業気象データと発育予測モデルによる水稲の生育ステージと出穂期の予測が必要です。農研機構では、これに本病の発生予測を組み込んだ薬剤散布適期連絡システムを開発しました(図5)7)8)。本システムはこれまでに農研機構で作成した「1km-メッシュ農業気象データ版イネ稲こうじ病の薬剤散布適期連絡システム」群図5発生状況の聞き取り調査結果と土壌菌量との対応表1聞き取り調査結果(目視によるほ場の状態)土壌菌量ほ場が真っ黒に見えるほ場に入って数歩あるくとすぐ見つかる畦畔に立ちほ場をゆっくり見渡すと見つかるほ場内でよく探してやっと見つかる全く見つからない多中少微無パソコン版スマートフォン版スマートフォン簡易版地図上で地点登録メール配信条件選択計算条件は上から順に選択9日間先発生予測計算条件は上から順に選択スクロールして 登録情報・ 結果表示計算条件は上から順に選択8ステップだけで簡単登録茨城県稲敷市上之島のほ場、健全イネ、「あきたこまち」、2018年9NARO Technical Report /No.9/2021

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