農研機構

VOICE from NARO

農作業の省力化に貢献する研究

田植えの頃、きれいに植え付けられた田んぼを見て、日本らしさを感じたり、心が洗われるような思いを抱かれたりする方も多いのではないでしょうか。

稲作に限りませんが、わが国の農業における労働力不足や農業従事者の高齢化に対応するため、より少ない人数で効率的に農作業を行う技術が強く求められています。今回の特集では、田植機と水稲直播(ちょくは)栽培技術について紹介しており、どちらも農作業の省力化に大きく関係しています。

温暖湿潤で雑草発生が多いわが国において、苗を育てて移植栽培を行うことは、作物の雑草に対する競争力を高め、除草の作業負担を減らすことができる重要な栽培技術ですが、機械化以前の田植え作業は、多くの作業者を集めて行う重労働でした。この労働負担を軽減するため、手押し型から歩行型、乗用型と機械化が進み、合わせて機械の高速化も行われ、現在では自動運転の田植機が使用されるまでになりました。この結果、田植え作業については大いに省力化されてきています。

一方、水稲移植栽培は苗を作る工程で多くの作業時間が必要であり、特に大規模な経営体では大きな負担となります。この育苗にかかる労力削減のため、種子を直接田んぼに播く、直播栽培技術が開発されてきました。水稲では効果の高い除草剤が普及したこともあり、近年、約3万5千ヘクタール(全国)で直播栽培が行われています。各地域の気候、土壌の性質、作業可能な時期などに合わせていくつかの直播方式があり、生産者の状況に応じた技術選択により直播栽培面積の拡大が期待されます。

農研機構では、引き続き農業生産者の労働負担低減や、労働生産性の向上とそれに伴う生産コストの低減に役立つ技術開発に取り組んで参ります。そのための農業機械の開発研究を主に担う農業機械研究部門では、今号で紹介したような農機具の変遷や最新農機を展示する施設もありますので、機会がありましたら是非お立ち寄りください。

農研機構 農業機械研究部門 所長
天羽 弘一