農研機構

VOICE from NARO

サツマイモ基腐病の克服に向けて

サツマイモと聞いて何を思い浮かべますか? 焼き芋、干し芋、スイートポテト、お菓子のペースト、それから芋焼酎やでん粉の原料などなど、サツマイモ(かんしょ)には、多くの用途があり、品種も多様です。べにはるか、安納芋などの名前を店頭で目にされるのではないでしょうか。

最近では、ダイエット食としても注目され、焼き芋ブームを引き起こしているとも言われています。また、日本のサツマイモは海外でも人気が高く、輸出額は、2021年までの10年間に約20倍と大きく伸びています。

ところが残念なことに、イモが腐敗して収量が激減する重大な被害をもたらすサツマイモ基腐病が、2018年に国内で初めて確認され、その後、全国26都道県で発生が確認されています(2022年6月現在)。南九州での被害が大きく、農林水産省の統計情報によると、主要産地の鹿児島県と宮崎県を合わせた収穫量は、2019年の34万トンから2021年の26万トンへ大きく落ち込んでいます。50年以上前に農研機構(九州農業試験場)が開発し、焼酎用として今でも広く生産されている品種コガネセンガンも大きな被害を受けており、これまでに経験したことのない被害状況です。

こうした中、農研機構はこれまでに、この基腐病菌を短い時間で検出・同定する新しい方法を開発して、早期の発見・初動対応に貢献するとともに、苗床の消毒方法などを提案してきました。サツマイモ基腐病の基本対策は、健全な苗を用いることで病原菌をほ場に持ち込まない、適切な管理によって病原菌をほ場で増やさない、収穫後の残さ処理などによって病原菌をほ場に残さない、この3つのすべてを徹底することです。しかし漏れなく行うことは簡単なことではありません。今回の特集ではこれらの基本対策を確実に実施するための方法と、この基腐病に強い品種の開発について紹介します。

農研機構は、今後とも、こうした対策が確実に効果を上げるよう、生産者と一緒に現場での取り組みを進め、健全なサツマイモの生産に貢献していきます。

理事 (研究推進Ⅳ担当)
井手 任IDE Makoto