農研機構

VOICE from NARO

AIを活用してスマート農業の課題解決へ

今回の特集では、スマート農業を実現する上では欠かせない重要な技術として、AI(人工知能)をご紹介します。

AIについては、碁や将棋で人間に勝った、車を自動で運転する実験に成功した、などの話題で様々なところで取り上げられており、耳にされた方も多いと思います。また、最近では人間のように自然でクオリティの高い回答を返してくれるチャットGPTが大きな話題となっています。

AIはその名の通り、人間の脳の知的な働きをコンピューター上で実現するものであり、物体を認識する、事象を予測する、状況に応じてデバイス(人間の場合は手足)を動作させるなどの機能があります。

コンピューターの登場以来、AIの研究が進められてきましたが、複雑な脳の働きをコンピューター上で実現することは非常に難しく、その実用化は停滞しておりました。

しかし、2000年代になって深層学習(ディープラーニング)などの新技術が登場し、多くのデータを学習させてAIを高度化することが可能となり、2010年頃から一気に活用が広がりました。

このようなトレンドを背景に、農研機構では2018年に農業情報研究センター(農情研)を立ち上げ、農業分野での本格的なAI研究に取り組んできています。

技術が進歩したと言っても、一つの汎用的なソフトウェアあるいはハードウェアとして万能なAIを実現することはまだできません。

AIで解決したい課題や目的に応じて、AIを構築し、システムとして展開する必要があります。

特に重要なことがAIの学習のためのデータを揃えることです。

農情研では、各研究セグメントと連携してデータを収集し、AIに学習させることで、アプリケーション指向のAI研究を行っています。

今回の特集では、害虫調査や作物の生育予測、栽培管理などの具体的な事例を中心に紹介します。

農研機構では、今後ともAIをうまく活用して、食料・農林水産業の生産性向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を推進し、生産・流通・加工・消費の現場の課題を解決してまいります。

理事(基盤技術担当)
中川路 哲男NAKAKAWAJI Tetsuo