社会にインパクトのあった研究成果

農業技術10大ニュース 2017年選出

ICTによる水田の自動給排水栓を開発
-スマホでらくらく・かしこく水管理-


図 本システム利用による水管理にかかる労働時間と積算用水量の調査結果
調査は2015年、農研機構内の実証水田(各20a区画)において、Aは労働時間(田植~収穫まで)、Bは積算用水量(mm)(出穂期~収穫まで)を示しています。

水稲栽培において、労働時間の約3割を占めている日々の水管理は、大面積で分散した水田を管理する農家にとって大きな負担になっています。

農研機構は、水田の水管理をスマートフォンやPCでモニタリングしながら遠隔操作したり、自動で給水と排水を制御できる国内初のシステムを開発しました。水管理労力の大幅な削減により、大規模農家のさらなる規模拡大や余剰労力を活かした6次産業化への取組に貢献し、所得向上が期待されます。

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自動運転田植機を開発
-田植作業の大幅省力化に期待!!-


写真 無人作業中の自動運転田植機
ほ場端で自動旋回している様子

日本の水稲作は、トラクタ、コンバイン、田植機に代表される農業機械の普及により、高速化と大幅な省力化が実現されました。一方、1経営体当たりの作付面積は増加の一途をたどり、なかでも10haを超える大規模経営がその過半数を担うようになっており、更なる高能率化、省力化が求められています。

農研機構は、初心者でも熟練並みの田植え作業が可能な自動運転田植機を開発しました。 独自開発の操舵システムにより、高速旋回と高精度直進作業を実現しました。農繁期に必要となる人員を削減可能で、営農規模の拡大に寄与することが期待されます。

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イネいもち病菌の感染の要となる遺伝子を発見
-いもち病の新しい防除法の開発に期待!!-


写真 水田に発生したいもち病

いもち病は世界各国で稲作に深刻な被害をもたらす重要病害で、糸状菌(カビ)であるいもち病菌によって引き起こされます。海外では小麦での被害も急速に広まっています。

農研機構は、岩手生物工学研究センターと東京大学生物生産工学研究センターの協力で稲に感染するカビ「いもち病菌」から、感染の要となる遺伝子「RBF1」を発見しました。RBF1をもたない変異型いもち病菌は、稲の自己防御反応を抑制できないため感染できません。RBF1の働きを阻害する物質が見つかれば、新たないもち病防除法の開発につながると期待されます。

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ウェブで使える「全国デジタル土壌図」を公開


図 全国デジタル土壌図
土地の利用形態によらず、日本全域を網羅しています。画面上で目的の場所を選ぶと凡例が表示されます。土壌図を拡大表示することにより、全国土を対象とした土壌図(縮尺20万分の1相当)から農耕地土壌図(縮尺5万分の1相当)へと表示が切り替わります。

土壌は、養分や水を保持して植物に供給し、農業生産や自然生態系を支えるとともに、炭素の貯留や温室効果ガスの発生など、地球規模の物質循環においても重要な役割を果たします。土壌が持つこれらの機能は、土壌の種類やその性質によって大きく異なります。そこで土壌の機能を最大限に利用するためには、各種土壌の分布を把握し、種類に応じた管理(施肥管理、水管理等)をする必要があります。

農研機構は、日本の国土全域の土壌の種類や分布がわかる「全国デジタル土壌図(縮尺20万分の1相当)」を作成しました。併せて、改良版の「農耕地土壌図(縮尺5万分の1相当)」を作成し、ウェブ配信サイト「日本土壌インベントリー」を通じて提供しました。農作物の栽培管理など農業での利用に加え、環境に関する行政施策への貢献が期待されます。

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米粉100%パンの製造技術を開発
-補助材料なしでも、ふんわり、ふっくら!-


写真 100%米粉パン

食料自給率の向上のため、我が国の基幹農産物である米の消費拡大は、重要な課題となっています。近年、手軽さ等を利点とするパン類を朝食に取り入れる頻度が高くなっていることから、米の新たな利用法の一つとして、米粉をパン類に利用する研究開発が精力的に行われています。

農研機構は、補助材料を使用せず基本原料だけで作製できる米粉100%パンを開発しました。広島大学との共同研究により、微粒子型フォームの形成により膨らむメカニズムを明らかにしました。タイガー魔法瓶株式会社との共同研究により本成果が実用化されるなど、小麦アレルギーへの対応や米の需要拡大への貢献が期待されます。

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作業精度が高く高能率な軟弱野菜調製機を開発
-ホウレンソウの調製作業の省力化に期待!!-


写真 開発機での作業の様子

一般的に、軟弱な葉菜類では面積あたり労働時間に占める、調製・出荷作業の割合が高く、生産者の労働負担が大きいため、規模拡大の妨げになっています。なかでもホウレンソウの調製作業では、出荷基準に合わせた、根切り及び子葉、下葉の除去等を行い、見映えの良い商品を提供していますが、調製・出荷作業に要する時間の割合はこれまで全作業時間の6割近くを占めてきました。

農研機構は、株式会社クボタ、株式会社斎藤農機製作所と共同で、ホウレンソウを対象とした高能率軟弱野菜調製機を開発しました。現行機では4名作業が前提でしたが、開発機では、2名作業でも連続した調製作業が可能となり、作業能率も現行機と比較して最大約1.5倍でした。本開発機により、調製作業の省力化が期待されます。

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キクに青い花色を付与する技術を開発
-新たな価値を生み出す青いキクによる花き産業の振興に期待!!-


写真 青いキク

キクは日本の切り花出荷量の40%を占める重要な花きです。キクには黄・赤など様々な花色がありますが、青紫や青といった花色はなく、青いキクの開発が望まれていました。

農研機構は、サントリーグローバルイノベーションセンターと共同で、「青いキク」の開発に成功しました。色素を修飾する2種類の遺伝子をキクに導入することで、花弁を青色にしました。本成果により、花色のバリエーションが拡がり、キクの高付加価値化、新たな用途の提案が可能になり、花き産業の振興への貢献が期待されます。

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