特集2 米作りのイノベーション
直播栽培技術
大規模化する米作り
ここ数年で農地の集約化が進み、規模拡大する個人農家や農業法人が増えて、農業の大規模化が急速に進んでいます。このような状況を受けて、生産効率の高い栽培技術の導入も進んでいます。
農研機構は、こうした日本の農業事情の変化に対応するお米の栽培技術の開発に取り組んでいます。その一つが「直播栽培技術」です

畑用の農機で田んぼに直接お米の種もみをまいています。
同じ機械
畑で使う農業機械の汎用利用で低コスト化

欠点を克服
倒れにくい品種「萌えみのり」など
高速化
時速7~8キロメートルで耕し、種をまく。育苗や田植えがないので人手や時間、労力を削減!
短縮・分散
直播栽培導入による労働時間の変化のイメージ

出典:「最新の直播栽培の現状(令和2年産)」農林水産省
乾田直播栽培は米と麦・大豆・子実用トウモロコシなどとの「輪作」に向いているのも大きな特徴です。輪作することで、田んぼの土の健康を維持します。



畑で使う農業機械の汎用利用で低コスト化

高速化
時速7~8キロメートルで耕し、種をまく。育苗や田植えがないので人手や時間、労力を削減!
短縮・分散

出典:「最新の直播栽培の現状(令和2年産)」農林水産省
乾田直播栽培は米と麦・大豆・子実用トウモロコシなどとの「輪作」に向いているのも大きな特徴です。輪作することで、田んぼの土の健康を維持します。



欠点を克服

倒れにくい品種「萌えみのり」など
栽培方法の多様化
従来の「移植栽培」でブランド米を大切に育てる農家さん、手頃でおいしいお米を大規模に作る農家さんなど、米作りに求められるニーズの多様化に伴い、様々な栽培技術が開発されています。
移植栽培
育苗箱に種をまいて苗まで育て、水田に田植えする一般的な栽培方法です。田植えは労働時間が長く人手もいるので農家さんの負担となっています。田植えの負担を減らす研究にも取り組んでいます。
(自動運転田植機参照)
ビニールハウスの中で20日間ほどかけて苗を育てます。

ほ場に浅く水をはり、代かきして泥の状態にします。

育った苗は田植機で水田に植え付けます。

乾田直播
乾いた田んぼに直接種もみをまきます。
種から芽が出て、葉が伸びたら水を入れます。稲の収穫後は畑にして、麦や大豆などを作ることができます。人手不足に対応しつつ、収益の拡大を目指す大規模農業経営に向いている栽培方法です。
十分に田んぼを乾かし、耕起・整地します。時速7~8キロメートルで作業します。

麦などの種まきに使われる機械を使って一気に種をまきます。

種をまいたら機械で土を踏み固めます。種もみの出芽を揃え、漏水を防止するためです。

湛水直播
浅く水をはって代かきした田んぼに直接種もみをまきます。カルパー剤などでコーティングした種もみを使う方法とコーティング無しの種もみを使う方法があります。産業用無人ヘリコプターや背負式動力散布機などで種まきもできるので、小さな水田でもできます。
苗立ちを助けるため、種もみにコーティングするか、根だけ伸ばした種もみを作ります。

ほ場に浅く水をはり、代かきして泥の状態にします。

浅く水をはった田んぼに種もみをまきます。

カルパー
べんモリ
鉄コーティング
無コーティング

乾田直播栽培の第一人者
大谷 隆二 氏
東北大学大学院農学研究科教授
(前農業機械研究部門所長)
東日本大震災の復興支援にもなった乾田直播栽培
東日本大震災の翌年、津波による流失・冠水等の被害を受けた仙台平野沿岸部の復興支援事業で大区画ほ場を造り、乾田直播で水稲、小麦、大豆と2年3作の輪作試験を行いました。
省力的に稲ができることを実証でき、水稲57%、小麦46%、大豆72%と生産コスト低減(東北平均)も実現できました。技術が復興支援のお役に立てたと思います。
我々の復興地域での取り組みを農家さんたちは興味を持って見ていました。現地視察会や研修会、シンポジウム※も開催され、乾田直播による水稲の栽培面積は拡大していきました。
※「乾田直播フォーラム in 宮城 2020」(2020年2月14日・仙台国際センター)

震災時(宮城県)

3.4ヘクタールほ場の苗立ちの様子(宮城県)