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農業と環境 No.134 (2011年6月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

「農業と環境の空間情報技術利用ガイド」が刊行された

農業環境技術研究所は、2011年3月に、「農業と環境の空間情報技術利用ガイド」を刊行しました。

「農業と環境の空間情報技術利用ガイド」(表紙)

農業と環境の空間情報技術利用ガイド
の表紙

本書は、農業生産や環境問題、生態系問題にかかわる研究者や実務者、あるいは関連分野の教育・普及活動などにかかわる方をおもな読者として想定し、リモートセンシング(遠隔計測技術)、GIS(地理情報システム)、GPS(全地球測位システム)のそれぞれに関する農業環境技術研究所の研究成果やノウハウを、わかりやすく解説しています。

なお、本冊子は非売品です。関係する研究機関・研究室などに無料配布する予定ですが、個人的に入手を希望される方は、空間情報技術利用ガイド刊行事務局( rsgis@niaes.affrc.go.jp )あてのメール、または、農業環境技術研究所広報情報室あてファックス ( FAX: 029-838-8299 ) で、送り先とお名前・ご職業 (組織・会社名と部署・役職など) をお知らせください。

以下に、本書の冒頭の「刊行にあたって」と目次とをご紹介します。

農業と環境の空間情報技術利用ガイド
―リモートセンシング・GIS・GPS 利用のために―

刊行にあたって

―農業環境問題解決に向けた空間情報技術の活用のために―

本ガイドブックは、農業環境技術研究所生態系計測研究領域の空間情報研究グループがこれまでに行ってきた研究成果やノウハウを、広く農業生産や環境問題、生態系問題に関わる研究者や実務者の方々、さらには関連分野の教育・普及活動等に関わる方々に伝えることを目的として編集したものです。そのため、専門性と情報量を維持しつつも、できるだけわかりやすく解説することをこころがけました。第 I 部ではリモートセンシング、第II部では GIS、第III部では GPS についてそれぞれ解説し、第IV部は資料集として関連 Web サイトを幅広く集録するとともに、グループの過去5年間の成果集と論文リストを収録しました。

近年、多くの地域で食糧生産と環境保全上の問題が顕在化しています。これは温暖化などの地球規模の環境変化のみならず、市場経済のグローバル化に伴って諸国家・地域の農業生産と環境問題が密接につながっているためです。そのため、国内的には作物の生育・収量の診断や精密農業、環境負荷の広域評価、適正農業管理工程等への対応を含む産地の市場戦略において、空間情報の活用はきわめて有効です。また、輸入食糧への依存性が高い我が国では、世界各地で生産されている農作物の生産状況を早期に把握することは、農業施策や食糧確保のための意思決定の基礎として重要です。

一方、農地、林地、草地などの陸域植生は、水・炭素・窒素などの循環に深くかかわっており、また生物資源の量・多様性の持続性にも多大な影響を与えます。地域の炭素・窒素循環の評価や、温暖化の緩和策・適応策においても、生態系の空間的・時間的な変動の実態を把握することは不可欠です。

このような背景のもと、国内および国際的な農業問題と地球環境科学的な問題の解明、および意思決定の基礎として、広域的・適時な空間情報が今日ほど重要であったことはないと考えられます。

本ガイドブックによって、広範な利用場面において空間情報技術の活用が進み、問題解決の一助になれば、編著者としてこの上ない喜びです。

平成23年3月

編集統括 井上吉雄 

目次

刊行にあたって

I. リモートセンシング

はじめに

実例1 改造デジタルカメラを用いた作物生育モニタリング

実例2 航空機ハイパースペクトル観測によるイネ窒素含有量マップ作成

実例3 衛星画像を用いた毎年の水田作付状況の把握

実例4 地域スケールの土地利用と生態系炭素ストックを定量

実例5 メコン川下流域の洪水分布の変化図

実例6 ベトナム−メコンデルタにおける水稲栽培方法・エビ養殖分類図

1. リモートセンシングの基礎

1.1 リモートセンシングとはどんな方法か

1.2 リモートセンシングデータの特性

(1) 可視〜近赤外〜短波長赤外域

(2) 熱赤外域

(3) マイクロ波域

(4) 偏光特性

1.3 観測の仕方

(1) 地上〜低高度

(2) 航空機やヘリコプター、飛行船による中高度からの観測

(3) 高高度(地球観測衛星)

2. リモートセンシングデータからの情報抽出と利用事例

2.1 地上観測の方法と実際

(1) 偏光による葉群構造の推定

(2) 改造デジタルカメラを用いた植物生育の監視

2.2 航空機観測の方法と実際

(1) 光学センサとその利用例:航空機ハイパースペクトルデータによるイネ群落窒素含有量のマッピング

(2) Pi-SAR による水稲作付地の抽出

2.3 衛星観測の方法と実際

(1) 多空間解像度・異種センサを用いた流域作付分類図の作成

(2) MODIS データを用いた洪水分布/ 栽培体系の把握

(3) 多時期時系列データと空間解像度の異なる衛星画像の利用方法

(4) 地方〜国スケール解析

3. 参考文献

コラム

(1) リモートセンシングのデータとツール ― 10 万円ぐらいで―

(2) リモートセンシングのデータとツール ― 100 万円ぐらいで―

(3) リモートセンシングのデータとツール ― 1,000 万円ぐらいで―

(4) 飛行船型低層巡航リモートセンシングシステム

(5) 野外計測用高速ハイパースペクトル画像計測システム

(6) 超音波センサとレーザスキャナ

(7) 三次元デジタイザ

(8) 中間赤外域の反射率計測

(9) コーナーリフレクタ ワズ ストールン

(10) 海外現地調査 自然保護区の森林は順番に伐採されている

(11) 雹嵐 “Hail storm” による農業災害

(12) 海外現地調査 食肉需要が高まり国立公園内で放牧されている

(13) 海外現地調査 国境は観光地だ:ベールに包まれた国を覗き見る

II. GIS:地理情報システム

はじめに

実例1 国土地理院発行地形図および国土基本図

実例2 数値地図と基盤地図情報

実例3 その他のデジタル地理空間情報

実例4 Web で閲覧できる地理空間情報

実例5 世界の GIS 情報

1. 地図データの基本的な性質と GIS の機能

1.1 地図とデータを繋ぐ

1.2 地表面と地図面の関係を整理する

1.3 「位置」を表す

1.4 GIS データとはどのようなものか?

2. 地図データの利用法

2.1 GIS を利用した空間情報処理の基本

(1) データの表示

(2) GIS によるデータの解析

2.2 利用事例

(1) 土地利用変化と環境資源

(2) コスト距離を用いた生物生息地の連続性評価

(3) 日本の全流域圏・農耕地を網羅する農業生態系空間情報解析システム

3. データおよび解析/表示ソフトウェア

3.1 GIS データの所在

(1) ダウンロード型

(2) Web サービス型

3.2 解析/ 表示ソフトウェアの紹介

(1) オープンソース

(2) 市販 GIS ソフトウエア

4. 引用文献

コラム

(1) データの “精度” について

(2) 地図の測地系

(3) データの利用と権利について

III.GPS:全球測位システム

はじめに

1. GPS の基礎

1.1 GPS が記録する基本的な情報

1.2 記録方法位置情報を記録する方法は大きく分けて3種類

1.3 GPS の使い方:質の高いデータを取得するための手順

2. GPS 装置の種類

2.1 GPS の種類

2.2 GPS を利用するソフト

3. 利用事例

3.1 GPS を使ったリモートセンシング画像解析のための現地調査

3.2 農地・農村の記録:写真を撮るぐらいならば、位置も記録しよう

3.3 地図作成支援:地図に書いていない農地設備や道を地図に加える

3.4 作業記録:日々の作業の移動路と時間を記録する

3.5 作業支援:農村ナビ

3.6 精密農業での利用

4. 参考文献

コラム

(1) 悪い GPS データの例

(2) アナログ版 GPS カメラ

(3) 準天頂衛星 「みちびき」

IV. 補足資料・情報類

A. 参考 Web サイト集

B. 農業環境技術研究所 農業空間情報リサーチプロジェクト成果情報(2006-2010):CD 収録

(1) 主要成果・普及成果集

(2) 最近5年間の論文リスト

C. 衛星名・センサ名一覧

索引

執筆者一覧

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