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プロジェクトの成果
Ⅰ-地域農業機械化支援タイプ9
都府県におけるイアコーン生産利用を実現する イアコーン収穫スナッパヘッド
研究開発プロジェクト担当

農研機構 農業機械研究部門、(株)タカキタ、アグリアシストシステム(株) 、(株)那須の農、新潟県農業総合研究センター畜産研究所、岡山県農林水産総合センター、徳島県立農林水産総合技術支援センター
都府県のコントラクタを中心に普及する汎用型飼料収穫機に装着可能な2条刈りイアコーン収穫スナッパヘッドです。小型軽量で、頭部損失3%未満、0.3ha/h以上のほ場作業量で作業が可能です。
開発レポート
開発の背景

 国産濃厚飼料のひとつとしてイアコーン(写真1)の生産が北海道等の大規模生産地で取り組まれていますが、都府県での普及が進んでいません。その原因の一つとして、イアコーンを収穫できる機械が海外製の自走式フォレージハーベスタしかなく、一筆面積が小さく、ほ場が分散していることが多い都府県では運用が困難であることが挙げられます。そこで、都府県のコントラクタに普及し、中山間地での稼働実績も豊富な汎用型飼料収穫機(写真2、以下、本体)に装着可能な、小型で軽量なイアコーン収穫スナッパヘッド(以下、スナッパヘッド)を開発しました。

 開発は、平成29年度から革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)で基礎段階を株式会社タカキタ、アグリアシストシステム株式会社、岡山県農林水産総合センター、徳島県立農林水産総合技術支援センターと共同で進め、令和2年度より農業機械技術クラスターにおいて実用化に向けた開発に取り組んだ結果、この度、共同研究企業からの市販化に至りました。

開発機の概要

 スナッパヘッドは、本体の刈取部に装着するアタッチメントです(写真3表1)。軸方向を進行方向に配置した2本1組のかき込みローラが互いに内向きに回転し、その間にトウモロコシ茎葉を挟んで引き下ろすとともに、かき込みローラ上部に配置されたセパレータで雌穂を茎葉から分離します。引き下ろされた茎葉はかき込みローラ下部に配置された株元カッタで約10cmに切断され、ほ場に散布されます(図1)。分離された雌穂はフィードチェーンとオーガで本体の収穫部に搬送され、設定切断長6mmに細断された後、ホッパを経由して成形室で直径1m、幅0.9m、質量550~650kg(雌穂含水率40~50%のとき)のロールベールに成形されます。
 ロールベールは、市販のベールラッパで密封し、ラップサイロとして貯蔵されます。
 スナッパヘッドは2条刈で、中割作業が可能であり、本体に装着したときの機体前後方向の質量バランスを保つため、海外製(3条刈)と比較して1条当たりの質量が約25%軽量です。また、枕地での旋回のしやすさを確保するため、全長を海外製より約25%短く抑えると同時に、頭部損失を抑えつつ、一定以上のほ場作業量を確保できるよう、かき込みローラの長さと回転速度等を設定しています。本体に標準装備されているマルチヘッダとスナッパヘッドとの着脱交換作業は、作業者1名で、10分程度で行うことができます。
 デバイダは上方に折りたたむことができ、全長が作業時よりも約50cm短くなるため、移動時の運転操作が容易になります。

                
開発機の性能・評価

 スナッパヘッドの頭部損失は3%未満と少ないロスでの収穫作業が可能です(表2、雌穂乾物収量1.6t/10a、全体乾物収量2.8t/10a、平均稈長314cm、株元茎長径2.3cm、着雌穂高140cmのとき)。
 イアコーン収穫作業時のほ場作業量は0.32-0.39ha/h(表3、ほ場面積0.12-0.46ha、雌穂乾物収量0.9-1.0t/10a、全体乾物収量1.8-2.3t/10a、平均稈長270-273cm、株元茎長径2.2-2.4cm、着雌穂高138-153cmのとき)であり、都府県に多い小区画ほ場でも能率的な作業が可能です。
 市販の自走式ベールラッパと組作業を行うことにより、2名でイアコーンサイレージの収穫調製作業を行うことができます。

写真4 収穫作業の様子
市販化

 これらの取組の結果、令和6年3月から「スナッパヘッダアタッチ、型式:SMR-EH」(株式会社タカキタ)として販売が開始されました。汎用型飼料収穫機の刈取部に装着されているマルチヘッダと着脱交換することで、イアコーンの収穫作業に用いることができます。

詳細情報