都府県でのイアコーン生産を可能とするスナッパヘッド

要約

都府県のコントラクタを中心に普及している汎用型飼料収穫機の収穫部アタッチメントとして装着可能な2条刈イアコーン収穫用スナッパヘッド。小型軽量ながら頭部損失3%未満、0.3ha/h以上のほ場作業量での作業が可能である。

  • キーワード : イアコーン、コントラクタ、都府県、濃厚飼料、汎用型飼料収穫機
  • 担当 : 農業機械研究部門・機械化連携推進部・機械化連携推進室、無人化農作業研究領域・革新的作業機構開発グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

国産濃厚飼料の一つとしてイアコーンの生産が北海道等の大規模生産地で取り組まれているが、都府県への普及は進んでいない。その原因の一つとして、イアコーンを収穫できる機械が海外製の自走式フォレージハーベスタしかなく、一筆面積が小さく分散ほ場が多い都府県では運用が困難であることが挙げられる。そこで、都府県のコントラクタに普及し、中山間地での稼働実績も豊富な汎用型飼料収穫機に装着可能な、小型で軽量のイアコーン収穫用スナッパヘッドを開発する。

成果の内容・特徴

  • イアコーン収穫用スナッパヘッド(以下、開発機)は、汎用型飼料収穫機(以下、本体)の収穫部に装着するアタッチメントである(図1)。開発機は、軸方向を進行方向に配置した2本1組のかき込みローラが互いに内向きに回転し、その間に挟んだトウモロコシ茎葉を引き下ろすとともに、かき込みローラ上部に配置されたスリットで雌穂を茎葉から分離する構造である。引き下ろされた茎葉は、かき込みローラ下部に配置された株元カッタで5~10cmに切断され、ほ場に散布される。分離された雌穂はフィードチェーンとオーガで本体の収穫部に搬送され、設定切断長6mmに細断された後、ホッパを経由して成形室で直径1m、幅0.9m、質量550~650kg(雌穂含水率40~50%のとき)のロールベールに成形される。
  • 開発機は2条刈で、中割作業が可能であり、本体に装着したときの機体前後方向の質量バランスを保つため、海外製(3条刈)と比較して1条当たりの質量が約25%軽量である(表1)。また、枕地での旋回のしやすさを確保するため、全長を海外製より約25%短く抑えると同時に、頭部損失を抑えつつ、一定以上のほ場作業量を確保できるよう、かき込みローラの長さと回転速度等を設定している。本体に標準装備されているマルチヘッダと開発機との着脱交換作業は、工具を用いずに1名で10分程度で行うことができる。
  • 開発機の頭部損失は3%未満と少ないロスでの収穫作業が可能である(表2)。また、0.12~0.46haのほ場におけるほ場作業量は0.32~0.39ha/hであり、都府県に多い小区画ほ場でも能率的な作業が可能である。市販の自走式ベールラッパと組作業を行うことにより、2名でイアコーンサイレージの収穫調製作業を行うことができる。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : コントラクタ、飼料生産組合等。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 都府県・13,700ha・120台。
  • その他 : 2023年度に株式会社タカキタから市販化される。なお、本体は飼料用トウモロコシや飼料用イネ等の飼料作物を1台で収穫・細断・ロール成形し、クローラ式走行部を有する自走式収穫機で、開発機を装着可能な型式は、都府県のコントラクタを中心に約130台が普及している。

具体的データ

図1 開発機を装着した汎用型飼料収穫機,表1 開発機の諸元,表2 開発機の頭部損失,表3 開発機のほ場作業量

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(経営体強化プロ)
  • 研究期間 : 2017~2022年度
  • 研究担当者 : 志藤博克、川出哲生、小林優史(タカキタ)、岡嶋弘(タカキタ)
  • 発表論文等 :
    • 志藤ら(2022)日草誌、68:118-124
    • 志藤ら(2022)日草誌、68:130-136