大豆作付予定の圃場における子実を加害する害虫のリスク診断とその対策
大豆に被害を与えるカメムシ類は西日本を中心に被害が発生しています。
また、マメシンクイガは、北日本を中心に発生が多く認められています。これら子実を加害する害虫は、葉を加害する害虫よりも減収被害を招きやすいとされています。
まずは、これまでの状況の確認から行ってみましょう。
①過去に害虫による子実被害はありましたか?
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あり
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なし
葉などを加害する他の害虫を確認する。
他の対策を優先しましょう。
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②被害はマメシンクイガによるものですか、それともカメムシ類によるものですか?
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不明
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マメシンクイガ対策の選定をしてみましょう。
殺虫剤の防除適期は地域により異なります。 必要に応じて指導機関にお問い合わせください。
以下は作付け前の確認です。防除適期前となったら防除の要否を再確認してください。 他の害虫の防除は慣行通り実施するのが前提となります。
③作付けしようとする圃場は連作ですか?
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はい
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いいえ
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④連作となりそうな圃場が近く(概ね200m以内)にありますか?
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はい
適期に1回防除する準備をしましょう。 |
いいえ
指導機関が発表する予察情報を参考に防除の要否を判断しましょう。 |
⑤その圃場は昨年の虫害粒が多かったですか?被害粒率が概ね10%以上を目安としてください。
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はい
連作を回避して、輪作をしましょう。 |
いいえ
輪作または2回防除の準備をしましょう。 |
殺虫剤による防除対策
年や地域によって発生状況は異なる場合があります。 殺虫剤による防除は必要に応じて指導機関にお問い合わせの上、適期散布を心がけて下さい。
カメムシによる被害が中程度(5~20%)と予想される場合には、 子実肥大初期(開花30-40日後)に1回防除するのが効果的です。
20%を超えるような大きな被害が予想される場合には、 莢伸長後期(開花20-30日後)と子実肥大中期(開花40-50日後)に2回防除するのが効果的です。
⑧その他の害虫一覧(★印は子実も加害する種類)
葉などを加害する害虫を中心に掲載しています。写真から種類を判断して、対策の参考にしてください。効果的な対策には、地域ごとの情報を(例えば県の試験場や防除所から)入手することも必要です。
目次から他の対策も確認してみましょう。
1. ハスモンヨトウ
分布:沖縄~北海道。長距離移動性害虫
被害の様子:秋ダイズでは葉や莢、子実を食害する。 卵は数百粒の卵塊として葉裏に産卵される。 卵塊からふ化した若令幼虫が葉を食害して白変葉となる。 2令までは集団で摂食するが、3令幼虫期以降は分散して食害する。
発生時期:白変葉(若齢幼虫群)のピークは、 第2世代若令幼虫最盛期(8月下旬~9月上旬) および第3世代若令幼虫最盛期(9月下旬~10月上旬)である。
生態:大豆では2~3世代を経過する。 幼虫は約3週間で蛹化、2週間で成虫になる。 春から降雨が少なく猛暑年の秋に多発する傾向がある。
防除:8月下旬~9月中旬に1~2回散布する。 フェロモントラップによる誘殺数を利用する場合は、 誘殺ピークから2週間目が防除適期となる(下の山口県の例)。 薬剤抵抗性が発達しているので、薬剤の選定に注意する。
他の防除対策の事例
上記の情報は予告なく変更されることがあります。 また情報の内容は2020年3月9日の時点での情報ですので、 詳細についてはお近くの普及センター等へご確認下さい。
2. ウコンノメイガ
ウコンノメイガ幼虫
ダイズ被害葉(葉巻)
分布:全国に分布し、特に北陸地域で多い。
形態:幼虫は体長20mm程度になり、体色は黄緑色で光沢がある。
被害の様子:幼虫は縁から葉を巻き込んで筒状に糸で綴り、 その中で葉を食害する。被害葉が多発すると、子実の小粒化と収量減少を招く。
寄主植物:ダイズ、インゲンなどのマメ科植物およびアカソ、カラムシなどのイラクサ科植物。
発生時期:幼虫で越冬し、越冬後はイラクサ科植物で発育して6月に羽化する。 成虫は7月上旬~8月上旬にダイズ圃場へ飛来する。 ダイズ上で1世代を経過し、新成虫はイラクサ科植物群落へ移動する。
防除:殺虫剤散布の効果が高い。散布適期は被害葉の発生初期(新潟県では7月第6半旬~8月第1半旬)。 幼虫の発育に伴い被害葉が急増するので、散布は遅れないように注意する。
他の防除対策の事例
富山県、新潟県、秋田県では、葉巻数を指標とした要防除水準が設定されている。
上記の情報は予告なく変更されることがあります。 また情報の内容は2020年3月9日の時点での情報ですので、 詳細についてはお近くの普及センター等へご確認下さい。
3. ミツモンキンウワバ
幼虫
被害状況
分布:屋久島~本州
寄主植物:多食性でダイズの他、ゴボウ、ニンジン、キク、フキ等の葉を加害する。
被害の様子:低密度で恒常的に発生する。 葉に1個ずつ産卵する。約4日間でふ化する。 時に多発生となる。 幼虫は葉(80~90㎝)を摂食し、 5齢または6齢幼虫を経て約2週間で葉裏に薄まゆを作って蛹化する。
発生時期:第2世代幼虫は8月、第3世代幼虫は9月以降。 8月末~10月上旬に被害が多くなる。
形態:幼虫の体色は淡緑から濃緑まで変異がある。 シャクトリ状に歩行。 成虫は中型の暗褐色の蛾で前翅中央部に2個の小白斑がある。
防除:ハスモンヨトウと同時に防除を行う。
他の防除対策の事例
上記の情報は予告なく変更されることがあります。 また情報の内容は2020年3月9日の時点での情報ですので、 詳細についてはお近くの普及センター等へご確認下さい。
4. ツメクサガ
ツメクサガ幼虫
分布:全国。北海道、東北、中部地域など比較的冷涼な地域で多い。
形態:幼虫は体長35mm程度になる。 体色は緑色であるが、終齢幼虫では茶褐色の個体も現れる。
被害の様子:幼虫は葉を食害する。 発育に伴い食害量も多くなり、葉脈を残し葉を食べ尽くすことも多い。 老熟幼虫は若莢も食害し、子実が肥大している莢では円形に子実を食害する。 他の食葉性チョウ目害虫も酷似した葉の被害を生じさせる。 加害種の特定には、幼虫を確認する必要がある。
寄主植物:ダイズ、アズキ、インゲン、クローバーなどのマメ科植物およびテンサイ、アマ。
発生時期:蛹で越冬する。 北海道、東北では年2世代で、成虫は6月と8月、 幼虫は6月後半~7月前半と8月後半~9月前半に発生する。
防除:多発生することはまれであるが、 突発的に多発生することがある。多発生時には幼虫期に殺虫剤を散布する。
5. オオタバコガ
莢の上の幼虫
莢を食害する幼虫
分布:沖縄~北海道。長距離移動性害虫。
被害の様子:本種は卵塊で産卵しないため、 幼虫が群生して食害することがなく、ハスモンヨトウの被害のような白変葉にはならない。 葉の他に莢も食害する。
発生時期:年4~5世代発生。 8~9月に多い。10月下旬まで発生が認められる。
寄主植物:寄主範囲は広く、花蕾や果実内に食入する。
生態:卵から羽化までの発育期間は30℃で23日、 夏期の高温時には1カ月程度で1世代を経過する。 越冬は休眠した蛹で行い、春の発生密度は低く、夏から秋にかけて発生密度が高くなる。
防除:8月下旬~9月中旬に1~2回散布する。 フェロモントラップによる誘殺数を利用する場合は、誘殺ピークから1週間後が防除適期となる。
6. ジャガイモヒゲナガアブラムシ
成虫及び幼虫
吸汁痕
分布:日本全土
形態:成虫の体長は約3mm。 体色は黄~緑色で体長より触角が長い。
被害の様子:吸汁部位が黄化し、加害が進むと落葉する。 発生が多い場合は、葉の黄化が生じ、早期落葉被害が発生する。 植物ウイルス病の媒介害虫としても重要で、ダイズではダイズわい化病を媒介する。
発生時期:越冬世代は寒冷地では5~6月、 暖地では4~5月。ギシギシ等の雑草で越冬し、6月以降にダイズへ寄生、 7月下旬から8月下旬にかけて発生密度が高まる。
被害作物:ナス科野菜、キュウリ、イチゴ、ダイズ等多くの農作物に寄生
防除:寄生密度が急速に高まった場合は、直ちに薬剤防除を実施する。
7. フタスジヒメハムシ
莢の上の成虫
分布:日本全土
被害の様子:成虫は葉、子葉、莢、茎などを食害する。 莢の表面に食害を受けると変色し、子実にも黒斑ができて品質が低下する。 幼虫は根粒を食害するため、多発地域では根粒食害による生育及び収量低下がおこる可能性がある。
発生時期:暖地では年2世代、寒冷地では年1世代発生する。 寒冷地では越冬世代成虫は5~6月、第1世代成虫は8月中旬以降に現れる。 暖地では越冬世代成虫は4~5月、第1世代成虫は7~8月頃、第2世代成虫は9~10月頃に現れる。
生態:成虫が畑の畦畔の落葉や草間で越冬する。 越冬世代成虫は8月頃まで長く生存。 根または、根に接する土壌に1粒ずつ産卵する。 幼虫は根粒内に潜入して内部を食害する。成熟するまでに数個の根粒を食害する。 蛹化は地表近くの土中で行われる。蛹期間は10日前後。
防除:連作を避ける。 播種前に土壌処理剤、種子処理剤を利用する。 子実肥大期に成虫を対象に殺虫剤で防除をおこなう。
地域の防除対策の事例
上記の情報は予告なく変更されることがあります。 また情報の内容は2020年3月9日の時点での情報ですので、 詳細についてはお近くの普及センター等へご確認下さい。
8. マメハンミョウ
株上の成虫
食害を受けた株
食害を受けた圃場
分布:本州以南
被害の様子:成虫が葉を食害する。 成虫が群がって葉を食害する。発生量が多いと食べつくされて茎だけが残る。 発生は局所的で、広域に多発生することは極めてまれである。
発生時期:成虫は年1回、7月後半から9月。
寄主植物:成虫はダイズ、アズキ、インゲンマメなどのマメ科、 ジャガイモ、ナスなどのナス科などの植物の葉や花を食害する。 幼虫は土中でイナゴ、キリギリスなどの卵を捕食して生育する。
特徴:成虫の体液は、皮膚につくと炎症を起こすので、 むやみに触れないようにする。
防除:多発しなければ防除の必要はない。 ほ場全面に発生することはまれなため、局所散布で対応できる。
9. ダイズサヤムシガ
幼虫
成虫
子実の被害
分布:沖縄本島~北海道
被害の様子:新葉をつづり合わせ、葉を内側から食べ生長を止める。 新芽に近い茎に潜り込み、そこを食害するため先の部分がしおれる。 莢に入り込み、中の子実を食害し、大きな歯跡が残る。
発生時期:6月下旬頃から被害が発生し、7月中旬から8月にピークとなり、10月までみられる。
生態:マメヒメサヤムシガに似る。 年に3~4回発生する。成虫は卵をダイズの葉裏や葉柄、若葉に点々と産みつける。 夏期は卵から成虫になるまでに30~40日かかる。
寄主植物:ダイズ・ソラマメのほか、フジに発生する。
防除:初期被害は、幼虫は若葉をつづり合わせて食害するので注意を払い、 着爽後は莢のなかへ入らないようにする。 よって、防除は初期被害発生時に1~2回、落花後は10日おきに2~3回散布する。
上記の情報は予告なく変更されることがあります。 また情報の内容は2020年3月9日の時点での情報ですので、 詳細についてはお近くの普及センター等へご確認下さい。
11. ダイズシストセンチュウ
ダイズシストセンチュウのシスト
被害圃場(葉の黄変)
分布:主に関東以北
形態:1mm(シスト)
被害の様子:シスト内で越冬した卵から孵化した幼虫が根に寄生する。 寄生されると根の伸長、養分吸収が阻害されて根粒菌の着生が抑制され、生育不良となる。 密度が高い場合は茎葉が黄化する「月夜病」の症状を呈し、減収に至る。
被害発生時期:播種1~2カ月後頃に茎葉が黄化する症状がみられる。
寄主植物:ダイズ、アズキ、インゲンマメなどマメ科植物
防除:豆類以外と組み合わせた輪作、抵抗性ダイズ品種の利用、 クローバやクロタラリア類の栽培、抵抗性ダイズ品種の利用、播種前の薬剤防除