5.その他のリスク

その他の要因として考えられることについて

A.病虫害

B.倒伏

C.気象に起因する問題

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A.病虫害

麦では品種改良や新しい薬剤による防除により、病虫害による減収事例は少なくなってきましたが、作付けしている品種やその年の気象条件によっては問題となります。

次の写真を見て、麦を前回作付けしたときの病害や虫害の状況と作付体系を確認しましょう。


土壌伝染性病害

雪腐病(黒色小粒菌核病)


縞萎縮病【小麦】


縞萎縮病【大麦】


種子伝染性病害

黒穂病(裸黒穂)


雲形病【大麦】


黒節病


空気伝染性病害

赤かび病


さび病(赤さび病)


うどんこ病


虫害

トビムシ


アブラムシ

前回麦を作付けしたときに、上にある病害や虫害は目立っていましたか?

はい
いいえ
問題ありません
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病害やトビムシ類の被害への対策は、予防的な措置が基本です。地域の防除指針に沿って適切な防除を行いましょう。

①耐病性品種の導入

縞萎縮病に抵抗性の新品種「タマイズミR」

従来の縞萎縮病に弱い品種「タマイズミ」

小麦と大麦では感染する病原が異なることが多いので、麦種の置き換えも有効です。

縞萎縮病や麦類萎縮病などの土壌伝染性のウィルス病には有効な薬剤防除法がないため、上の写真のような抵抗性品種の導入や、③の栽培管理の見直しが必要です。

②適切な防除

種子伝染性の病害

*黒節病、黒穂病、雲形病、など

薬剤浸漬・粉衣処理、温湯処理などの種子消毒を徹底しましょう。

発病ほ場での採種を避け、種子の更新をしましょう。

「黒節病」、「黒穂病」については「黒節病などの種子伝染性病害に注意しましょう」もご覧ください。

空気伝染性の病害

*赤かび病、さび病、うどんこ病、雪腐れ病、など

地域の指針に従って、適期の薬剤散布を徹底しましょう。

「赤かび病」については「麦類のかび毒汚染低減のための生産工程管理マニュアル」も参照してください。

③栽培管理の見直し

播種時期

トビムシ類や斑葉病は早播きすると発生が減少し、縞萎縮病、黒節病、条斑病は遅播きすると発生が減少します。

施肥

過剰な窒素施肥は、さび病やうどんこ病の発生を助長しますので、適切な施肥を心がけましょう。

被害株の処理

発生株を可能な限りほ場から持ち出したり、プラウでの反転耕による鋤込みを行うなど、被害発生株の適切な処理も有効です。

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B.倒伏

倒伏は、生育量が大きくなりすぎることで発生するため、生育を抑制するための対策が必要になります。

まず、適正な播種時期、播種量および施肥量を守ることです。これに加えて、追肥前の生育診断により生育過剰が予測されるときは適宜追肥量を減らします。

この他の対策技術として、植物生育調節剤「エテホン」、「クロルメコート(北海道のみ登録)」、「プロヘキサジオンカルシウム塩」の散布があります。

*植物生育調節剤の使用にあたっては、登録内容をご確認の上、使用してください。

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C.気象に起因する問題

このマニュアルは、圃場や管理の問題点を診断して導入すべき対策技術を示すことにあるため、気象条件に起因する問題については対応していませんが、以下の内容を参考にしてください。


暖冬や異常高温

①生育初期

生育初期の高温は、茎立期頃までの生育を旺盛にします。ただそのまま通常の追肥を行うと、茎数が過剰となり、「倒伏」凋落型の生育となって「枯れ熟れ」による登熟不良につながります。

一方で減肥を行うと、大きくなった植物体が必要とする窒素が足りずに有効茎歩合や1穂粒数が減少します。また、生育ステージが進んで茎立ちが早まると、寒の戻りがあったときに凍霜害のリスクが高まります。

生育過剰の抑制には麦踏みが一定の効果を示します。

②登熟期

登熟期の高温に対しては直接的な対応策はありませんが、この時期の高温と同時に発生することが多い乾燥による水ストレスに対しては、出穂期までに健全な根を深い層までよく張らせておくことが重要であり、排水性、土壌構造の改善および適正な土壌の栄養状態を保つことが大切であることは云うまでもありません。

一方で、基肥を減らして追肥の割合を増やす「追肥重点型施肥」では、茎立期頃までに生育過剰になりにくい上、追肥量を増減できる幅が大きいため、生育初期の高温への対策に活用できる可能性があり、現在この点については検証中です。

また、日本は収穫期に向けて多雨になる地域が多いため、穂発芽カビ粒が発生しないように計画的な収穫を行うようにしましょう。倒伏をしないようにすることも重要です。

以上のように、気象条件に起因する収量変動を小さくするためにも、基本技術の励行に加えて、本マニュアルで紹介した各種の対策技術を活用して、小麦・大麦の安定多収生産を目指しましょう。

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参考として、長期間にわたる小麦収量と気象要因との関係を解析した研究報告1)~3)を下に示します。この中では小麦の減収と関わりの深い気象要因として、気温では「播種~生育初期」、「頂端小穂分化期」および「登熟期」に高いこと、雨量では「播種~生育初期」および「登熟期」に多いことなどが抽出されています。

播種~生育初期の多雨については、湿害の他にも適期からの播種遅れの原因になりますが、これに対しては、本マニュアルで紹介した各種の排水対策を徹底することでかなりの部分まで対応可能です。また、湿害や肥料の流亡による生育不足に対しては、生育診断に基づいた適切な追肥量制御(追肥重点型施肥も含む)によって、その影響を軽減することが可能です。

1) 箕田(2010) 日作紀79: 62-68

2) 箕田ら(2015) 日作紀84: 285-29

3) 西尾ら(2017) 日作紀86: 139-150