多収で病害抵抗性が優れる道央以南向けあずき新品種候補「十育155号」
[要約]
「十育155号」は、「エリモショウズ」に比べ成熟期がやや遅く、多収であり、粒大が大きく、流通上の規格内歩留が高い。また、道央以南で種皮色がやや淡く、品質が良好である。アズキ落葉病抵抗性、アズキ萎凋病抵抗性、アズキ茎疫病抵抗性に優れる。
[キーワード]
アズキ、病害抵抗性、アズキ落葉病抵抗性、アズキ茎疫病抵抗性、多収
[担当]道立十勝農試・作物研究部・小豆菜豆科
[代表連絡先]電話0155-62-2431
[区分]作物、北海道農業・畑作
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
道央以南の地域は、全道の小豆作付面積の4割を占めているが、この地域で生産される小豆は、比較的高温条件下で登熟するため、粒大が小さく、種皮色が濃くなる傾向があり、流通・加工業者の評価が道東産に比べて低い。特に高温年においては、小粒化による収量と調製歩留の低下、濃色化による品質低下が問題となる。また、転換畑地域は排水不良圃場が多く茎疫病の被害が多い。一方で、冷害年においては道東と比べて被害が少ないため、北海道全体での小豆の安定供給における重要性は高い。そこで、道央以南地域向けに収量・品質、耐病性が優れ、天候の変動に左右されず安定供給が可能な品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 「十育155号」は、中晩生、多収、落葉病(レース1)・茎疫病(レース1、3)・萎凋病抵抗性の道央以南向け品種の育成を目標とし、平成10年に十勝農試において、落葉病・茎疫病(レース1)・萎凋病抵抗性の「十育137号」を母、落葉病(レース1)・茎疫病(レース1、3)・萎凋病抵抗性の「十育140号(後の「しゅまり」)」を父として人工交配を行なった後代から育成した系統である。
- 「十育155号」は、「エリモショウズ」と比べ、育成地において成熟期は3日遅い。主茎長は長く、主茎節数は同程度で、倒伏はやや多い。(表1)
- 育成地では、「エリモショウズ」に比べ、莢数が少ないが、一莢内粒数は同程度、百粒重は重く、子実重は優る。種皮色が淡く外観品質はやや劣る。(表1)
- 普及見込み地帯である道央以南では、成熟期は1日程度遅く、育成地同様主茎長が長く、子実重が優る。また、粒大が大きいことから流通上の普通小豆規格歩留が高く、種皮色が明るく、外観品質は同等〜優れる。
- 落葉病、萎凋病抵抗性は"強"、茎疫病抵抗性は"かなり強"である。(表1)
- 耐冷性は、「エリモショウズ」の"中"に比べやや劣り"やや弱"である。(表1)
- 加工製品の試作試験では、同産地の「エリモショウズ」と比較して同等〜やや優る。(表2)
[成果の活用面・留意点]
- 北海道の道央以南における早・中生種栽培地帯、中生種栽培地帯および中・晩生種栽培地帯およびこれに準ずる地帯に普及する。普及見込み面積は3,600haである。
- 落葉病(レース1)、茎疫病(レース1,3)、萎凋病に抵抗性を持つが、栽培に当たっては適正な輪作を守る。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「あずき新品種候補系統「十育155号」(普及奨励)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:寒地・寒冷地向け高品質、耐冷性、病害抵抗性、機械化適性のあずき品種の育成
予算区分:指定試験、道費
研究期間:1998〜2009年度
研究担当者:佐藤 仁、島田尚典、田澤暁子、青山 聡、藤田正平、村田吉平
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