黄化病抵抗性のいんげんまめ(金時類)新品種候補「十育B78号」
[要約]
「十育B78号」は、インゲンマメ黄化病抵抗性が“極強”で、本病に対する薬剤防除が不要である。収量性および粒大は主要品種の「福勝」並に優れる。粒色は「福勝」よりやや淡いが同系色である。「福勝」と同程度の甘納豆および煮豆の加工適性を有する。
[キーワード]
いんげんまめ、金時、黄化病抵抗性、DNAマーカー選抜、反復戻し交配
[担当]道立十勝農試・作物研究部・小豆菜豆科、道立中央農試・基盤研究部・遺伝子工学科
[代表連絡先]電話0155-62-2431
[区分]北海道農業・畑作
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
北海道において金時類は、豆類の中でも成熟期が早いことから秋まき小麦の前作として栽培されるなど、輪作体系上重要な作物である。また、実需者からは、煮豆や甘納豆の加工用として品質の良さが高く評価されており、生産と価格の安定化が常に求められている。しかし、現行の主要品種はインゲンマメ黄化病(以下、黄化病)に抵抗性を持たず、それが生産不安定要因の一つになっている。生産現場では、本病に対して予防的な薬剤防除が複数回行われ、労働時間および生産コストの増加につながっており、多発年には大きな被害が発生する。そこで、大粒良質で黄化病に抵抗性を持つ金時類品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 「十育B78号」は、「大福」由来の黄化病抵抗性遺伝子(Sdvy-1)を、DNAマーカー選抜による連続6回の戻し交配により、主要品種の「福勝」に導入し育成した系統である。
- 黄化病抵抗性以外の成熟期、収量性等の農業形質は「福勝」とほぼ同等である(表1)。
- 黄化病には全く罹病しないため、本病に対する薬剤防除は不要であり、減収もしない(表2)。
- 粒色は「福勝」よりもやや淡いが同系色で、粒形、粒大は「福勝」に類似する。
- 実需評価では、「福勝」と同程度の甘納豆および煮豆の加工適性を有する(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 北海道のいんげんまめ作付け地帯に普及する。普及見込み面積は2,600haである。
- 「福勝」と同様に大粒であるので、収穫・乾燥条件に留意し、損傷粒の発生を防ぐ。
- 極端な多肥または疎植栽培は、「福勝」と同様に茎折れの発生が多くなることが懸念されるため、避ける。
- インゲンマメ黄化病に対する防除は不要であるが、その他の病害には従来の品種と同様に罹病するため、適切な防除に努める。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「いんげんまめ新品種候補「十育B78号」(普及奨励)」
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:菜豆新品種育成試験
予算区分:道費
研究期間:2001〜2009年度
研究担当者:佐藤 仁、島田尚典、奥山昌隆、江部成彦、竹内 徹
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