ハマナスW2を用いた系統交雑母豚に対する授乳期間の飼料給与技術
[要約]
哺乳子豚頭数が多い初産および2産母豚は、子豚の増体量が多いにも関わらず飼料摂取量が少ないため、発情再帰日数が延長しやすい。この対策として、授乳期間のCP摂取量を高めることにより繁殖性改善が期待でき、暫定的なCP含量推奨値は22%とする。
[キーワード]
繁殖雌豚、ハマナスW2、哺乳子豚頭数、繁殖性、飼料中CP含量
[担当]道立畜試・家畜研究部・中小家畜育種科
[代表連絡先]電話0156-64-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
分娩あたり11頭以上の離乳が期待できる多産系母豚であるハマナスW2を用いた系統交雑繁殖雌豚(以下、W2L)は、哺乳子豚頭数の増加によって母豚の体重や背脂肪の消耗が大きくなり、発情再帰日数の延長や次産の産子数減少などへの影響が懸念される。そこで本試験では、W2Lの授乳期における生産の特性および飼養管理上の問題点を明らかにし、授乳期間において栄養摂取量を高めて、次産での繁殖性を改善するための飼料給与技術について検討する。
[成果の内容・特徴]
- W2Lの初産〜4産母豚において、子豚総重量の日増加量は産次間で差が無く、哺乳子豚頭数が多くなるに伴って増加するが、飼料摂取量は初産や2産母豚では3産以上の母豚より少ない (表1)。初産〜4産の母豚体重およびP2脂肪厚(最後肋骨の椎骨から腹側6.5cmの位置の背脂肪厚)の増加量は、哺乳子豚頭数が多くなるに伴って減少し、初産は他の産次より顕著に減少する (図1)。発情再帰日数は若い産次ほど延長する傾向にあり (表2)、産次別の平均値では初産は5-8産より有意に延長する(p<0.05)。初産、2産の母豚は3産以上の母豚と比べて子豚増体が同程度であるにも関わらず飼料摂取量が少なく、体重や背脂肪厚も減少し、その程度は哺乳子豚頭数が多くなるほど大きくなる。これらのことは、初産および哺乳子豚頭数の多い2産母豚では、子豚増体に見合った飼料摂取が不足しており、発情再帰が遅延する要因になっていると考えられる。
- 初産母豚において飼料中の粗タンパク質(CP)含量を15%(リジン0.8%)から18%(リジン1.0%)へと高めた結果、CP摂取量は0.9kg/日から1.0kg/日に増加し、日本飼養標準のリジン要求量に対する充足率は73%から94%まで高まり、発情再帰日数は改善する傾向がある。しかしながら次産の受胎率および総産子数に対する改善効果は認められない。
- 2産母豚の飼料中CP含量を17%(リジン0.9%)から22%(リジン1.3%)まで高めた結果、CP摂取量は1.1kg/日から1.3kg/日に増加し、日本飼養標準のリジン要求量に対する充足率は97%から132%まで高まり、発情再帰日数および次産の受胎率と総産子数が改善される傾向がみられる (表3)。哺乳子豚頭数の多いW2Lの2産母豚では、飼料中CP含量を高めることによって次産の繁殖成績が改善すると考えられる。
[成果の活用面・留意点]
- 本試験はハマナスW2とゼンノーL01を用いた系統交雑繁殖雌豚を供試した。
- 本試験はSPF環境において実施した。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「ハマナスW2を用いた系統交雑母豚に対する授乳期間の飼料給与技術」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:ハマナスW2を用いた系統交雑繁殖雌豚の飼養管理技術
予算区分:民間共同
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:岩上弦太郎、小泉徹、梶野清二、甲田洋子、山内和律
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