道北における春まき小麦「春よ恋」初冬まき栽培の窒素施肥基準
[要約]
上川北部および留萌の初冬まき栽培において、熱水抽出性窒素による地力窒素区分、低・中・高に応じて窒素を融雪期に12、9、4kg/10a、穂揃期に3kg/10a施肥することで480kg/10aの目標子実収量と基準内の蛋白含有率を確保できる。
[キーワード]
[担当]道立上川農試・技術体系化チーム
[代表連絡先]0166-85-4004
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
上川北部および留萌地域において、初冬まき栽培を実施する際の地力に応じた適正窒素施肥量・配分を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 上川北部では、道央部に比較して融雪期が遅い、出穂期までの積算気温が低い、降水量が少ないといった気象的な条件により、短稈・少穂な倒伏しにくい生育相となる特徴がある。
- 現地の収量実態や経済性評価など各種条件から目標子実収量:480kg/10a、窒素吸収量:14kg/10aを設定し、収量変動要因を解析すると、土壌環境の不良要因(低pH、低リン酸、心土破砕の未実施)(図1)と熱水抽出性窒素含量で表される窒素地力要因の影響が大きい(図2)。
- 低地力圃場においては、窒素を融雪期に12kg/10a、穂揃期に3kg/10a施用することで、目標子実収量と基準内蛋白含有率を確保できる。さらに、土壌由来窒素吸収量推定値と目標窒素吸収量との差から地力区分別の施肥必要量を設定できる(データ省略)。
- 上川北部における倒伏の発生は、平成21 年のように偶発的な要因が重なった年にほぼ限られるが、倒伏の可能性が高い圃場(「稈長90cm 以上」または「稈長80cm かつ穂数700 本以上」)では融雪期窒素施肥量を減肥する必要がある(図3)。
- 土壌の熱水抽出性窒素含量は腐植含量と密接な関係が認められることから、衛星データ等より推定した腐植含量を地力区分に対応させ、初冬まき栽培の施肥区分図として活用することが可能である。
- 以上に基づき、道北初冬まき栽培(「春よ恋」)の窒素施肥基準を示す(表1)。施肥設計に先立ち、土壌診断に基づく理化学性改良等により、良好な土壌環境を確保することが前提である。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は上川北部および留萌地域における「春よ恋」の初冬まき栽培に活用する。
- 窒素施肥基準は、土壌診断基準値を満たし、心土破砕などの基本技術を実施し、土壌の物理性や化学性が良好な圃場を対象とする。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「道北地域における春まき小麦初冬まき栽培技術の実証」(普及推進)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:安定収量を目指した春まき小麦初冬まき栽培技術の定着と普及
予算区分:外部資金
研究期間:2007?2009年度
研究担当者:柳原哲司、高松聡、西村直樹、青山聡、岡田直樹、安岡眞二、小松勉、奥村正敏、楠目俊三、佐藤三佳子
発表論文等
平成19年度 産学官連携経営革新技術普及強化促進事業 春まき小麦の初冬まき栽培及び緑肥作物導入による転作麦高品質・高収量栽培技術の定着・普及報告書
平成20年度 同 報告書
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