エゾリンドウ栄養系の培養苗増殖法
[要約]
エゾリンドウ系の組織培養において、越冬芽茎頂を用いた継代培養および節培養による苗増殖法は有効である。越冬性向上につながる越冬芽様芽条は、15℃の低温、ショ糖濃度60g/Lの培養条件で、効率的に形成される。
[キーワード]
エゾリンドウ、茎頂培養、節培養、苗増殖、越冬芽様芽条
[担当]道立中央農試・基盤研究部・細胞育種科
[代表連絡先]電話0123-89-2583
[区分]北海道農業・生物工学
[分類]研究・参考
[背景・ねらい]
挿し木等の栄養繁殖が容易で一部では培養苗によるセル苗生産も実用化されているササリンドウ系とは異なり、エゾリンドウ系の組織培養による大量増殖は困難で、栄養系品種の育成は困難な状況にある。そこで、りんどう、特にエゾリンドウ系の栄養系品種育成のための組織培養による大量増殖法と苗養成法の確立を目指す。
[成果の内容・特徴]
- 茎の茎頂を用いた継代培養(りんどう基本培地;NH4NO3 1/2量のMS培地、0.01mg/L NAA、30g/Lショ糖、8g/L寒天添加、25℃、16時間日長)による4ヶ月後の苗の平均増殖率は5.5倍、それに対し、越冬芽茎頂を用いた継代培養では平均増殖率が22.3倍と高く、また供試26系統すべてで増殖が可能で、培養初期から苗数が確保され、増殖法として有効である(表1)。
- 節培養(りんどう基本培地)からの苗の増殖は供試24系統で平均3.4倍であるが、腋芽の1〜2ヶ月の培養で伸長した苗は2〜3節を有することから、より大量に増殖させる手法として有効である(表1)。
- 液体培養(NH4NO3 1/2量のMS培地、0.01mg/L TDZ、30g/Lショ糖)での腋芽増殖についても、平均すると節培養と同程度の増殖率であるが、比較的高い増殖率を示す系統があること、培養中は継代作業が不要であることから、増殖の一手法として有効である(表1)。
- 越冬性向上に有効とされる越冬芽様芽条(WLS)は、NH4NO3 1/2量のMS培地に0.01mg/L NAA添加の寒天培地、15℃の低温、ショ糖濃度60g/Lの培養条件で、効率的に形成される(表2、図1)。
- 上記の方法を用いて、12月からの越冬芽茎頂培養での腋芽、節培養による増殖で苗数を確保し、発根、鉢上げ、順化行程を連続して行い、翌年6月には圃場に定植することができる(図2)。
[成果の活用面・留意点]
- りんどう栄養系品種育成のための、有望系統の苗増殖に活用できる。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「りんどう栄養系品種育成のための培養苗増殖法」(研究参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:りんどうの培養苗大量増殖システムの構築
予算区分:共同(民間)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:入谷正樹、冨田謙一
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