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プロジェクトの成果
Ⅰ-地域農業機械化支援タイプ 12
降雨後の土壌でも適期を逸さず播種できる 畝立て乾田直播機
研究開発プロジェクト担当
農研機構 農業機械研究部門、農研機構 九州沖縄農業研究センター、I-OTA合同会社(ブルーアノール株式会社)
降雨後の高水分土壌でも播種可能で、水田の漏水防止機能を有する畝立て乾田直播機を開発しました。表面が硬い台形断面状の播種畝を成形すると同時に畝の上面に播種することで、ほ場の漏水防止と生育初期の降雨・滞水による湿害回避を図ります。
開発レポート
開発の背景・成果

 水稲の乾田直播栽培は、育苗や代かき、苗運搬作業を省略できることから、省力化技術として大規模経営体を中心に普及が拡大しています。直播栽培のうち乾田直播は、湛水しない水田に播種するため、低コストかつ省力でスクミリンゴガイによる食害も回避できる利点を有します。しかし、播種時には土壌が乾燥(土が付着しない程度)している必要があり、排水不良水田や降雨後のほ場では播種や鎮圧作業が制約されます(図1)。また、九州北部の二毛作体系では、大麦収穫から水稲播種までの期間が短く、迅速な播種が求められていました。
 そこで農研機構では、高水分条件下でも播種可能で、漏水防止機能を有する「畝立て乾田直播機」の開発を行いました。
 2013年から福岡県と共同研究を行い、2014年に特許「播種畝成形直播機」(特許第6754928号)を共同出願しました。その後、農機メーカや公設試と協力して機械の改良を続け、2018年~2021年に農業機械技術クラスターにおいてI-OTA合同会社と実用化に向けた開発に取り組みました。さらに、共同研究企業による開発機のブラッシュアップと現地モニタリングが行われ、この度、I-OTA合同会社の参画企業なども設立に関わったブルーアノール株式会社から市販化に至りました。

図1 高水分条件における土の付着による作業制約
開発機の概要

 開発機は全長1,460 mm、全幅2,360 mm、全高920 mm、質量526 kgであり、成形される播種畝は天面幅10 cm、下部幅30 cm、高さ7 cmになります。適用トラクタサイズは40~60馬力(29.4~44.1 kW)で、作業幅210 cm、条間30 cm、条数が7条です。畝立て乾田直播機の概念図を図2に示します。主な構成は、①畝成形補助部、②畝成形部、③直播作業部、④種子繰出部、⑤覆土鎮圧部です。
 その技術的特徴は、以下のとおりです。
1)土壌反転ディスクを利用した畝成形補助部①でタイヤ跡を均(なら)し、代かきハローを加工したソロバン玉状の回転・駆動する畝成形部②で表面が硬い台形状の播種畝を成形します。硬い播種床を作ることで、ほ場の漏水防止を図ることができます。
2)直播作業部③、種子繰出部④および覆土鎮圧部⑤で畝の天面に播種します。畝の高さは約7 cmであり、生育初期の降雨・滞水による湿害を回避することができます。
3)九州で深刻な問題となっているスクミリンゴガイの食害は、水深が4 cm以上ある部分で発生しやすいため、畝の天面に播種することで、スクミリンゴガイの食害回避の効果が期待できます。
 図3に開発機の構成、および図4に畝成形部(天面部)を改良した開発機を示します。
 図3は、天面成形部に畝上部を叩いて固める機能を持つ樹脂製の厚塗体(あつぬりたい)を組込んだ仕様、図4は、低コスト化を図るため天面成形部を簡素化した仕様です。

図2 開発機の概念図
図3 開発機の構成
図4 畝成形部(天面部)を改良した開発機
開発機の性能・評価

 熊本県玉名市の現地ほ場(灰色低地土)での実施例では、播種2週間前から前日までに214 mmの降雨があり、土の付着が顕著となる塑性限界(現地ほ場の場合:含水比32%)より高い土壌水分(含水比42%)となった条件下でも播種作業が可能でした(図5)。また、播種直後から2日目にかけ80 mmの降雨が観測されたほ場でも、湿害と考えられる症状は確認されず苗立率は9割程度確保できました。ただし、本技術は入水後(播種後3~4週間後)に、畝の上面が常に水面上に現れた水管理では、除草剤の効果が低減するため注意が必要です。
 開発機を用いた畝立て直播での坪刈収量(品種「ヒノヒカリ」)は、福岡県筑後市の試験場内ほ場で541kg/10a(慣行移植栽培区562 kg/10a)、熊本県玉名市の現地ほ場で531 kg/10a(慣行移植栽培区483 kg/10a)となり、移植とほぼ同等の収量が得られました(図6)。
 また、開発機の作業能率(漏水防止対策+施肥・播種)は、ほ場面積25 a、作業速度3.5 km/hにおいて14.0分/10aとなり、従来の乾田直播技術であるプラウ耕-グレーンドリル体系や不耕起V溝直播体系における14.4分/10a(播種前鎮圧:4.8、施肥・播種:6.0、播種後鎮圧:3.6)や30.6分/10a(代かき:19.2、施肥・播種:11.4)と同等以上であることがわかりました(図7)。

図5 高水分条件での播種の様子
図6 畝立て直播と移植の収量比較
図7 漏水防止対策+播種における畝立て乾田直播機と従来の乾田直播技術との作業能率の比較
市販化

 令和8年4月からブルーアノール株式会社より受注生産が開始されました。

乾田畝立て直播機「BA-MS-05-B」
(開発機と市販機は仕様が一部異なります)
詳細情報