10 豚の小脳における豚サーコウイルス2型が関与した血管のフィブリノイド壊死及び非化膿性髄膜炎を伴う多発性出血・壊死 〔篠藤倫子(愛媛県)〕

 LWD種,雌,56日齢,鑑定殺例.母豚590頭規模のSPF農場において,2008年10月から肥育豚における削痩,下痢,神経症状の増加と死亡率の上昇がみられたため,1頭について病性鑑定を実施した.

 剖検では,小脳に重度の出血,肺の肝変化,空腸壁の一部菲薄化,回腸粘膜面の出血,盲腸及び結腸壁の肥厚がみられた.

 組織学的に,小脳(提出標本)皮質及び髄質の多発性出血と髄質の壊死が顕著にみられ,小血管壁の壊死,血栓形成,血管周囲性の単核細胞浸潤や好酸性滴状物が観察された.髄膜では重度の出血と血管のフィブリノイド壊死を伴う単核細胞浸潤が認められた(図10A).また,他の中枢神経系組織の髄膜においても,単核細胞浸潤と線維素析出がみられた.その他,リンパ系組織における好塩基性細胞質内封入体を伴うリンパ球減少,化膿性気管支肺炎,盲腸及び結腸の粘膜下組織の水腫が認められた.抗豚サーコウイルス(PCV)2型家兎血清(動物衛生研究所)を用いた免疫組織化学的検査では,髄膜及び血管周囲の浸潤細胞や血管内皮細胞(図10B),リンパ系組織に陽性反応が認められた.

 細菌学的検査では,脳,腸を含む主要臓器から病原細菌は分離されなかった.ウイルス学的検査では,小脳,脾臓,扁桃のパラフィン切片を材料としたPCR検査でPCV2特異遺伝子が検出された.

 以上の結果から,本症例の小脳病変形成とPCV2の関与が示唆され,疾病診断名は豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)とされた.

豚の小脳における豚サーコウイルス2型が関与した血管のフィブリノイド壊死及び非化膿性髄膜炎を伴う多発性出血・壊死