11 鶏の鶏脳脊髄炎ウイルスによる中枢神経系における大型神経細胞の中心性色質融解 〔片山貴志(宮崎県)〕

 肉用鶏(地頭鶏),6日齢,鑑定殺例.5,000羽を飼養する肉用鶏農場において,2009年4月17日の入雛群(800羽)に脚弱の症状が認められ,4月23日に12羽の病性鑑定を実施した.脚弱の症状は,2峰性に5月8日まで継続し,計126羽(15.8%)を淘汰した.導入元の種鶏場では,日齢の異なるA,B,2ロットが隣接する鶏舎で飼養され,鶏脳脊髄炎ワクチンは98日齢で接種されていた.今回,3月下旬から4月上旬にかけて,360日齢のAロットに産卵率の低下及び孵化雛の淘汰数増加が認められていた.なお,3月中旬には,98日齢に達したBロットにワクチンが接種されていた.

 剖検では,12羽すべてにおいて,脳及び主要臓器に異常は認められなかった.

 組織学的に,視葉,延髄,脊髄(提出標本)では,大型神経細胞の中心性色質融解や非化膿性炎症が認められた(図11).また,心臓,膵臓,腺胃及び筋胃にリンパ球の集簇が認められた.

 ウイルス検査のために,罹患鶏の脳乳剤をSPF発育鶏卵に脳乳剤を接種し,孵化させた鶏(1日齢)の組織検査をしたところ,脊髄腰膨大部の大型神経細胞に中心性色質融解が確認された.なお,PCR検査では,脳乳剤から鶏脳脊髄炎ウイルス特異遺伝子は検出されなかった.

 以上の結果から,本症例は鶏脳脊髄炎と診断されたが,種鶏場における発生状況から,ワクチンウイルスの関与が疑われた.

鶏の鶏脳脊髄炎ウイルスによる中枢神経系における大型神経細胞の中心性色質融解