22 豚の肝臓にみられた Salmonella Choleraesuis による多発性巣状壊死・チフス様結節 〔柴田淑子(神奈川県)〕

 LWD,雌,120日齢,死亡例.繁殖母豚440頭を含む約3,400頭を飼養する一貫経営農場において,2008年9月に,発育が遅延した肥育豚1頭がチアノーゼを呈して死亡した.

 剖検では,胸水,心嚢水,腹水が認められ,肺では左右前葉,中葉,副葉,後葉前部が肝変化していた.各所リンパ節は腫大,充出血していた.

 組織学的に,肝臓(提出標本)で小葉中間〜辺縁性に壊死巣が多発していた.肝細胞索は萎縮し,類洞内に赤血球,リンパ球,組織球,好中球,線維素が充満していた(図22).肝小葉内に,マクロファージ,リンパ球の集簇巣がみられた.グリソン鞘には水腫がみられ,リンパ球や組織球が浸潤していた.右肺後葉及び副葉では,肺胞腔内に好中球,リンパ球,マクロファージの浸潤と水腫が認められた.右肺前葉及び中葉では,細気管支周囲にリンパ球の集簇がみられた.抗サルモネラO7抗体(デンカ生研(株))を用いた免疫組織化学的検査で肝臓,脾臓,肺,肺門・鼠径リンパ節で陽性反応がみられた.

 細菌学的検査では,肝臓,脾臓,腎臓,肺,浅頸・腸間膜・肺門リンパ節,血液から Salmonella Choleraesuis が分離された.ウイルス学的検査では,PCR法により肺門リンパ節から豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス特異遺伝子が,肺及び肺門リンパ節から豚サーコウイルス2型特異遺伝子(Genotype2B-2E型)が検出された.

 以上から,本症例は豚のサルモネラ症と診断された.

豚の肝臓にみられたSalmonella Choleraesuisによる多発性巣状壊死・チフス様結節