23 豚の豚丹毒菌による肝類洞のマクロファージ・好中球増数 〔別府 成(鹿児島県)〕

 バークシャー,雌,4歳,鑑定殺例.母豚25頭,種雄豚3頭,子豚120頭,肥育豚200頭を飼養する一貫経営農場で,2008年9月下旬に分娩待機舎の母豚約10頭が起立困難,食欲不振を呈し,2日間で7頭が死亡した.元気消失,起立困難を呈した母豚の病性鑑定を行った.

 剖検では,皮膚の発赤,肢端の変色,皮下・心臓の点状出血,肺の充血,脾臓の軽度腫脹がみられた.

 組織学的に,肝臓(提出標本)では類洞内にマクロファージや好中球が認められ,好酸球も散見された(図23).グリソン鞘の血管腔内にマクロファージの増加が認められた.小葉間結合組織に好酸球の軽度の浸潤がみられた.心臓では筋線維間に出血及びマクロファージ,好中球,好酸球の浸潤がみられた.グラム染色で肝臓の類洞や血管内及び心臓の筋線維間や血管内,脾臓の赤脾髄にグラム陽性桿菌が認められた.抗豚丹毒菌抗体(動物衛生研究所)を用いた肝臓,脾臓,腎臓,心筋,扁桃の免疫組織化学的検査により,主として血管内マクロファージの細胞質内に陽性反応が認められた.

 細菌学的検査では,大脳,脊髄,心臓,肺,肝臓,腎 臓,脾臓,腸間膜リンパ節から Erysipelothrix rhusiopathiae (血清型1a型)が分離された.ウイルス学的検査では,FA法により豚コレラ陰性,PCR法により豚サーコウイルス2型特異遺伝子が検出されたが,豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルスは陰性であった.

 以上の所見から,本症例は豚丹毒(敗血症型)と診断 された.

豚の豚丹毒菌による肝類洞のマクロファージ・好中球増数