26 牛の膀胱の急性化膿性漿液性炎を伴う血管平滑筋肉腫 〔壁谷昌彦(福島県)〕

 黒毛和種,雌,13歳,鑑定殺例.2008年5月17日,慢性の血尿を呈するとの稟告で診療獣医師が往診し,膀胱内腫瘤を確認し,ビタミンK1剤投与,膀胱内腫瘤部位焼烙等の処置をしたが,予後不良のため5月27日に病性鑑定を実施した.

 剖検では,膀胱の粘膜面に,充出血を伴う小指頭大の乳頭状腫瘤が散在性に認められた.

 組織学的に,膀胱(提出標本)の乳頭状腫瘤表層は上皮が脱落し,偽膜を形成していた.また粘膜固有層から粘膜下組織は好中球の浸潤及び水腫により肥厚していた.粘膜下組織には拡張した血管を巻き込むように大型で不整形の核を有する紡錘形細胞が網目状に増殖し(図26),有糸分裂像もしばしば認められた.PAM染色により血管内皮下の基底膜構造の消失及び断片化,紡錘形細胞の血管壁内増殖及び血管外への浸潤性増殖が認められた.アザン染色では紡錘形細胞は紫色を呈していた.抗Smooth Muscle Actin(SMA)モノクローナル抗体(DAKO)及び抗第[因子関連抗原ポリクローナル抗体(YLEM)を用いた免疫組織化学的検査で,増殖していた紡錘形細胞はSMA陽性,第衄因子関連抗原陰性を示し,平滑筋細胞由来が示唆された.その他,胸骨髄で赤芽球主体の過形成を認めた.

 病原検索では,病原細菌は分離されなかった.

 本症例は,臨床症状,病理所見から牛の慢性ワラビ中毒が最も疑われたが,疫学的にワラビの給与が確認されず,ワラビの関与を疑う牛の地方病性血尿症と診断された.

牛の膀胱の急性化膿性漿液性炎を伴う血管平滑筋肉腫