29 子牛の壊死性化膿性線維素性気管支肺炎 〔関口美香(大阪府)〕

 交雑種,雄,8日齢,死亡例.府内酪農家で予定日どおり正常分娩された子牛であったが,体格は小さく,哺乳困難であった.盲目で,枠内を旋回し,下顎は柵に擦り付けるため脱毛し,外傷があった.

 剖検では,重度に削痩,頭蓋腔に脳脊髄液が多量に貯留し,大脳が欠損していた.肺では暗赤色無気肺部が散在し,直径1cm前後の結節が複数形成されていた.

 組織学的には,肺(提出標本)は充うっ血し,出血巣や水腫が散在していた.大小の凝固壊死があり,壊死部の肺胞腔内には細胞退廃物,菌塊,線維素が充満していた.辺縁部には変性した炎症細胞が集簇し,紡錘形の燕麦様細胞も含まれていた(図29).周囲にはマクロファージ等の細胞浸潤や結合組織増生,線維素析出がみられた.広範な無気肺部では気管支・細気管支腔内に壊死した剥離上皮や好中球等の細胞退廃物が貯留していた.肺胞腔内には好中球やマクロファージ等の細胞が浸潤し,時に多核巨細胞も認められた.壊死部や細胞浸潤部にグラム陰性菌が確認された.

 ウイルス学的検査では,アカバネウイルスに対する中和抗体価が当該子牛血清で64倍,母牛血清で4倍だった.細菌学的検査では Pasteurella multocida が分離された.

 疾病診断名は水無脳症子牛の肺炎(パスツレラ症)とされ,病因として P. multocida の関与が疑われたものの,燕麦様細胞の出現と重度壊死を特徴としていたことから Histophilus somni の関与等の何らかの複合感染も疑われ,原因の特定には至らなかった.

子牛の壊死性化膿性線維素性気管支肺炎