30 牛の Fusobacterium necrophorum による多発性凝固壊死巣を特徴とする漿液性化膿性胸膜肺炎 〔瀧澤勝敏(群馬県)〕

 交雑種,去勢,20カ月齢,死亡例.肉用牛肥育農場で,前日夕刻まで無症状だった牛が,未明に口腔から泡沫を流出して死亡しているのを発見され,同日病性鑑定に供された.

 剖検では,肺は容積と重量を増し,肺胸膜に限局して,大豆大の白色結節を中心に有する暗赤色斑が多発していた.小葉間結合組織は水腫性の拡張が重度で,割面から多量の漿液が流出した.気管及び気管支は白色泡沫を多量にいれていた.肝臓には鶏卵大の被包化膿瘍が散見された.

 組織学的には,肺(提出標本)の白色結節は凝固壊死巣として観察され(図30),辺縁にはグラム陰性の長桿菌が帯状にみられ,周囲には好中球,リンパ球まれにマクロファージが浸潤していた.肺胞はマクロファージや好中球,一部に線維素をいれていた.細気管支に隣接する血管に上記と同様の細菌による菌栓塞がみられた.小葉間結合組織や肺胸膜は一部出血を伴い水腫性に拡張していた.抗 Fusobacterium necrophorum 抗体(動物衛生研究所)を用いた免疫組織化学的検査では肺の凝固壊死巣及び内部の長桿菌,辺縁の炎症性細胞細胞質,菌栓塞部の菌体,及び肝臓の膿瘍膜に陽性反応がみられた.

 病原検査では,肝膿瘍,脾臓,心臓及び肺の嫌気培養 により F. necrophorum を分離し,PCR法で F. necrophorum subsp. necrophorum と同定された.好気培養では細菌は分離されなかった.

 以上の結果から,本症例は F. necrophorum 感染症と 診断された.

牛のFusobacterium necrophorumによる多発性凝固壊死巣を特徴とする漿液性化膿性胸膜肺炎