36 牛の軟骨化生を伴った左心室心内膜の弾性線維と膠原線維の増生 〔茨木義弘(広島県)〕

 黒毛和種,雄,10日齢,死亡例.子牛は2008年10月13日に正常に娩出されたが,起立困難で哺乳力がなかった.その後,介助哺乳を続けたが,心雑音,呼吸困難を呈し23日の朝死亡した.

 剖検では胸水,心嚢水,腹水が増量していた.心臓は高度に拡大し,大動脈弁の閉鎖,上行大動脈と僧帽弁の低形成,左心室腔の狭小化,動脈管と卵円孔の開存があった.左心室の心内膜は黄白色を呈し,肥厚していた.

 組織学的に,心臓(提出標本)では心内膜は重度に肥厚し,弾性線維と膠原線維が多層状に増生していた.また,線維組織から軟骨組織への化生や,出血し疎開する領域もみられた(図36).その他,左心室心筋細胞の変性,壊死,石灰化などが観察された.肝臓では,小葉中心性に著明にうっ血し,空胞変性が認められた.肺では,気管支や肺胞が拡張し,肺胞内に漿液が滲出する他,フィブリンが析出していた.

 8日齢時の血液・生化学検査では,赤血球数,白血球数が上昇し,肝胆道障害,腎臓障害,筋肉障害及び炎症を疑う数値を示していた.

 以上より,組織診断名は牛の軟骨化生を伴った左心室心内膜の弾性線維と膠原線維の増生とされ,疾病診断名は牛の心奇形(大動脈閉鎖)とされた.

牛の軟骨化生を伴った左心室心内膜の弾性線維と膠原線維の増生