39 豚の Staphylococcus aureus による化膿性心外膜炎 〔矢野敦史(香川県)〕

 LW種,雄,約30日齢,鑑定殺例.肥育豚400頭,母豚80頭飼養の農場で,2008年10月から離乳直後の子豚に20頭に1頭の割合で体表の膿瘍,神経症状,まれに突然死がみられた.2週齢時に豚サーコウイルス(PCV)2型,3週齢時にマイコプラズマに対するワクチンを頸部皮下接種していた.

 剖検では,第三胸椎皮下にクルミ大,第三腰椎皮下に大豆大,心外膜にクルミ大,右側第三・四肋間筋に母指頭大の被包化膿瘍がみられ,膿瘍は白色泥状,チーズ様であった.左肺後葉に大豆大の膿瘍,左右全葉に微小膿瘍が散在,脾臓に出血性梗塞,肝臓の門脈周囲に出血巣,右腎臓腎盂に嚢胞がみられた.

 組織学的には,心臓(提出標本)及び第三・四肋骨間の膿瘍は,変性した好中球,菌塊,周囲にリンパ球,形質細胞,マクロファージ,線維芽細胞,線維化した膿瘍膜によって被包されていた(図39).第三・四胸椎の髄膜に好中球,マクロファージの浸潤がみられた.左肺後葉の膿瘍は変性した好中球,菌塊,周囲は器質化,皮膚膿瘍は変性した好中球,菌塊,周囲を線維化した膿瘍膜が被包していた.脾臓の赤脾髄に好中球の浸潤,肝臓の小葉間結合組織にリンパ球,マクロファージの浸潤,腎臓は菲薄化した皮質で尿細管の萎縮,消失,間質の線維化,糸球体の萎縮がみられた.心臓,肺,肋間筋の膿瘍内にグラム陽性球菌を確認した.

 病原検索では,細菌学的検査で心臓,肺,肋間筋の膿瘍から Staphylococcus aureus,小腸内容物から大腸菌が1.7×108個分離された.ウイルス分離検査は陰性であった.

 以上から,本症例は豚の S. aureus による多発性膿瘍 と診断された. Arcanobacterium pyogenes との類症鑑 別が重要と思われた.

豚のStaphylococcus aureusによる化膿性心外膜炎