44 牛死産胎子の腸間膜リンパ節の重度出血とリンパ 球の減少 〔中村理樹(熊本県)〕

 褐毛和種,雄,胎齢263日,死亡例(死産).本症例は,2008年9月4日に母牛38頭を飼養する生産農家において娩出された.母牛は13歳,10産目で異常産の経歴は有していない.当該農場の成牛は異常産3種混合ワクチンが接種されていた.

 剖検では,頭部のドーム状隆起,仙骨の一部欠損,尾の短縮,左腎臓の矮小化が認められた.

 組織学的に,各腸間膜リンパ節(提出標本)及び脾臓では,重度の出血とリンパ球の減少が認められた(図44).腸間膜では血管周囲に出血があり,わずかに炎症細胞浸潤が認められ,隣接するリンパ節では血液吸収像が認められた.萎縮した腎臓では,間質にび漫性の水腫及び膠原線維増生が認められ,右腎臓よりも未熟な糸球体が目立った.

 母牛血清にはアカバネ病ウイルス(AKV),アイノウイルス(AIV),チュウザン病ウイルス(CHUV),イバラキ病ウイルス(IBAV),牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)に対する抗体が確認された.子牛腹水からはAKV,AIV,CHUV,IBAV,BVDV,ピートンウイルス,シャモンダウイルス,牛流行熱ウイルスに対する抗体は検出されなかった.

 本症例は,一部の臓器の発達不良が認められ,出血性の変化がリンパ系組織に観察されたことが特徴的であった.流産の原因の特定には至らなかった.

牛死産胎子の腸間膜リンパ節の重度出血とリンパ