5 山羊の中脳のリステリア脳炎 〔池永直浩(山梨県)〕

 シバヤギ,雌,2歳,死亡例.2008年12月8日に観賞用に導入した4頭中の1頭が18日から食欲低下,動作緩慢,間欠性の震えを呈した.23日に左側頬に食渣が詰まり,舌と左耳が左側に下垂,24日に食欲廃絶,弛緩性麻痺,痙攣,25日に起立不能,意識低下を呈した.24日より抗生物質を投与したが,26日に死亡した.

 剖検では,脳に著変は認められなかった.

 組織学的に,間脳・中脳(提出標本)・橋などの脳幹部と小脳髄質に,微小膿瘍を中心に組織球が浸潤した壊死病巣が散在し(図5),周囲に小膠細胞と星状膠細胞の増生,スフェロイド形成,神経細胞の中心性色質融解,及びリンパ球,組織球,好中球から成る囲管性細胞浸潤が認められた.右側三叉神経節では神経線維束と神経細胞周囲に中等度のリンパ球と少数の組織球・好中球の浸潤が認められた.大脳では一部に軽度の囲管性細胞浸潤が認められた.肝臓では類洞内に好中球の小集簇が多数認められた.抗 Listeria monocytogenes 1a型抗体(動物衛生研究所)を用いた免疫組織化学的検査により,中脳・間脳・橋の壊死巣及びマクロファージ内に抗原が検出された.なお,グラム染色では菌体は確認されなかった.

 病原検索では,脳幹部から L. monocytogenes が分離された.

 以上から,本症例は山羊のリステリア症と診断された.

山羊の中脳のリステリア脳炎