6 牛の延髄におけるアカバネウイルス(genogroupU)による非化膿性灰白質脳炎 〔武田佳絵(福井県)〕

 ホルスタイン種,雄,3カ月齢,鑑定殺例.約110頭を飼養する肉牛肥育農場において,2008年10月11日に当該牛が突然に横臥,発熱した.治療後に回復がみられたが,15日より再度起立不能となり16日に病性鑑定を実施した(症例1).また,同年の10月19日に11カ月齢の牛が元気消失し,翌朝から前肢を伸張,起立不能となり22日に病性鑑定を実施した(症例2).福井県内では,おとり牛によるアルボウイルス流行状況検査で同年8月にアカバネウイルス(AKAV)の抗体陽転が確認され始め,その後県内全域に陽転が拡大していった.

 剖検で,症例1は脱水していた.症例2に著明な変化は認められなかった.

 組織学的に,症例1の延髄(提出標本)では病変は灰白質領域に主座し,単核細胞による囲管性細胞浸潤がランダムに認められた.グリア結節が多発性に観察され,神経細胞体の変性もみられた.同様の病変は大脳から脊髄まで広く観察されたが,中脳,橋,延髄にかけて顕著であった.抗AKAV家兎血清(動物衛生研究所)を用いた免疫組織化学的検査では,神経細胞体,軸索,神経線維等に陽性反応(図6B)が観察された.症例2においても同様の所見が認められた.

 病原検索では,症例2の脳・脊髄からAKAVが分離された.症例1及び2の脳・脊髄を用いてAKAVのRT-PCR検査を実施した結果,ともにAKAV特異遺伝子が確認された.SRNA分節の遺伝子解析の結果,これらはgenogroupUに属することが確認された.AKAVに対する血清中の中和抗体価は,症例1が32倍,症例2が16倍であった.

 以上から,本症例は牛のAKAV(genogroupU)生後感染によるアカバネ病と疾病診断された.genogroupUのAKAVはおもに異常産例で確認されており,本症例発生以後,県内でAKAVによる異常産が発生した.genogroupUのAKAVによる生後感染と確定された貴重な例であった.

牛の延髄におけるアカバネウイルス(genogroupU)による非化膿性灰白質脳炎