飼料作物病害図鑑

トウモロコシ ごま葉枯病 リスク評価スコア2.7 (3,3,2)

写真左、中央:一般的なレースOの病徴

写真右:レースTの病徴、上:T型細胞質トウモロコシ系統、下:N型細胞質トウモロコシ系統
病徴(レースO) 病徴(レースO) 病徴(レースT)
写真左:分生子(Bipolaris無性世代。葉上で形成され、風雨で飛散して蔓延)

写真右:培地上の交配により形成されたひも状の子のう胞子(Cochliobolus有性世代。細長い袋状の子のうに入っている。自然界ではほとんど形成されない)
病原菌(分生子) 病原菌(子のう胞子)

病徴:重要な糸状菌病。梅雨明け頃から発生が始まり、葉および葉鞘にオレンジ色~黄褐色、楕円形、長さ0.5~2cm、幅2~5mm程度の病斑を多数形成する。多発した場合は植物全体が枯れ上がる。8月から9月にかけて発生が増加する生育後期の病害。レースはトウモロコシの雄性不稔細胞質の型に応じて存在し、日本ではT型雄性不稔細胞質に特異的病原性を示さないレースOが発生している(月星ら 1994a, 1995)。

病原菌:Bipolaris maydis (Nisikado et Miyake) Shoemaker (=Cochliobolus heterostrophus (Drechsler) Drechsler)、子のう菌
病原菌の無性世代は、1926年に日本で西門義一により記載された。Bipolaris大型分生子菌群に属する(月星 2005e)。分生子が風雨で飛散して、まん延する。菌株間で侵入能、胞子形成能等に差があり(月星ら 1984, 1995)、トウモロコシ幼苗へのパンチ接種により病原力検定が行われた(但見 1985a)。単一劣性抵抗性遺伝子rhmをもつトウモロコシを特異的に強く侵す菌系統が存在する(月星ら 1994b, 1996a)。


生理・生態:感染すると飼料品質が低下し(井澤 1983a)、特に多発年では罹病性品種の収量は大きく低下する(佐藤 2014)。近紫外光の間欠照射により分生子が大型化し、病原力が高まる(月星・佐藤 1985a, 1986)。トウモロコシの抵抗性要因解析が行われ、侵入抵抗性よりも病斑拡大抵抗性が主要因であることが示された(月星ら 1987c, 1992)。本菌の宿主非特異的毒素オフィオボリンの産生能には菌株間差異があるが、病原力差異とは関連しない(月星ら 1993b, 2002)。菌株間で抗生物質耐性に差異がある(月星 2003b)。菌の交配型はPCR法により判別可能である(Gafurら 1997)。菌の染色体数は15-16本である(土屋・多賀 1999)。病原性については、ポリケタイド合成酵素(PKS)遺伝子(立脇ら 2003)および特定のオルソログあるいはオートファージ機構との関連(泉津ら 2013, 住田ら 2013)、メラニン合成系との関連(北出ら 2020)が解析されている。トウモロコシのファイトアレキシンであるカウラレキシンが本病の感染後に生成され(鶴嶋ら 2019)、抗菌性のジテルペノイド前駆体も生成される(鶴嶋ら 2020, 2021)。

防除法:トウモロコシ市販品種の抵抗性検定(杉山ら 1986a)、自殖および親系統からの抵抗性選抜とそのダイアレル解析が行われ(濃沼ら 1983, 1985, 1986, 井上ら 1985, 1989)、その結果数多くの抵抗性品種が育成・検定されている(佐藤ら 2005a)。最近ではマーカーおよびQTL解析も進められている(村木ら 2003, 2004)。簡易検定法としてトウモロコシ幼苗へのパンチ接種による抵抗性検定法が開発され(但見ら 1980, 1981, 1984a, 1984b, 郷田ら 1981)、幼苗検定で病斑拡大を評価することで圃場抵抗性を予測可能なことが示された(月星 1985b, 1993c)。輪作体系などの対策が示されている(橋爪 2001, 佐藤 2020)。ドローンによる空撮画像で圃場での発病後期の罹病程度を推定できる(秋山ら 2019, 黄川田ら 2020)。

総論:西原(1991): 標本写真とスケッチ, 月星(1999f, 2010e): 菌の扱い方、菌株情報、分類, 御子柴(2004b), 月星(2011c, 2019)


畜産研究部門(那須研究拠点)所蔵標本

標本番号 宿主和名 宿主学名 症状 採集地 採集年月日 採集者
N12-16 トウモロコシ Zea mays L. ごま葉枯病 宮崎県佐土原町宮崎総合農試 1979.9.13 西原夏樹・田村紘吉・岡田 大
N12-17 宮崎県日南-都城間 西原夏樹・岡田 大
N12-45 熊本県菊池郡西合志町 1979.10.18 西原夏樹
N14-13 宮崎県小林市 1975.9.2
N12-6 〃(スイートコーン) 宮崎市東郷町迫野内 1979.9.12 西原夏樹・田村紘吉
N22-14 千葉雪印 1972.10.2
N23-84 秋田畜試 1972.8.21

(月星隆雄,畜産研究部門,畜産飼料作研究領域,2021)


本図鑑の著作権は農研機構に帰属します。

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