飼料作物病害図鑑
飼料イネ いもち病
リスク評価スコア2.7 (3,3,2)
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| 葉の病徴 | 穂の病徴 | コブノメイガ併発による激発 |
病徴:飼料イネの栽培とともに九州を中心に発生が確認されている糸状菌病。葉に初め灰緑色、水浸状の病斑を形成し、後に周縁部褐色の紡錘形病斑となり、激しい葉枯を引き起こす。病斑の大きさは長さ2~10mm、幅1~3mm程度。飼料イネ品種には抵抗性が導入されていることが多いが、病原菌のレース分化に注意が必要である。
病原菌:Pyricularia oryzae Cavara (=Magnaporthe oryzae Couch)、子のう菌
病原菌は通常のイネいもち病菌であり、ライグラス、フェスクいもち病菌と同種だが(分生子:ライグラスいもち病菌)、メヒシバいもち病菌(P. grisea)とは別種である。イネ菌は牧草類に弱い病原性を示すが、牧草類のいもち病菌はイネには病原性を示さない。分生子が風雨で飛散して蔓延する。
生理および生態:全国で発生するが、特に九州地域での被害が多い。東北地方でも発生調査が行われている(新山・斎藤 2017)。飼料イネ品種では食用イネとは異なるレースが発生することが多く、採集地域によってもDNAフィンガープリンティングによる遺伝子型に差異がある(荒井ら 2004, 2005, 2006)。九州で分離された菌株のレース判別が行われた(園田ら 2020)。多発事例の原因として、伝染源の持ち込み、マイナーレースの顕在化および薬剤耐性菌の出現があげられている(荒井 2009)。
防除法:飼料イネ品種は、いもち病に対する真性抵抗性遺伝子を持っているものが多く、これら抵抗性品種の利用が好ましい(全国飼料増産行動会議 2009, 石井 2014)。しかし、病原菌のレースの変化により、容易に発病するため、発生状況の観察が重要である。食用イネと同様に多肥条件下では抵抗性が下がる。種子伝染するため、本田に移植する前に種もみの消毒あるいは苗床での殺菌剤処理が有効である。温湯浸漬による種子消毒法が報告されている(中島・平野 1992)。
総論:月星(2011c)
畜産研究部門(那須研究拠点)所蔵標本 なし
(月星隆雄,畜産研究部門,畜産飼料作研究領域,2021)
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