飼料作物病害図鑑

ライグラス かさ枯病 リスク評価スコア2.3 (2,2,3)

初期病徴 病徴

病徴:温暖地での発生が多い葉枯性のバクテリア病。葉では初め水浸状の斑点が現れるが、後にチョコレ-ト色の楕円形、紡錘形または不定形病斑となり、病斑周囲は黄色いハロー(かさ)で囲まれる特徴がある。病勢が進むと病斑が縦に伸び条状になり、最終的には枝梗や種子も侵されることがある。

病原菌:Pseudomonas syringae pv. atropurpurea (Reddy and Godkin 1923) Young, Dye and Wilkie 1978、バクテリア
1960年代から北海道および千葉県で発生し、その後東北、西日本など広い範囲で確認された。フェスク、ブロムグラス、チモシー、ブルーグラス等のかさ枯病菌と同一種。グラム陰性菌。ライグラス菌はPseudomonas syringae IV群菌に属し、ベントグラスには病原性を示さない(逵・瀧川 2015)。


生理・生態:本菌は毒素コロナチン(C18H25O4N)を産生し、この毒素単独でも植物にクロロシスを引き起こす(農林水産研究文献解題~ライグラスの病害)。イタリアンライグラスのプロトプラストに対するコロナチンの生理的作用が明らかにされ(酒井 1981)、気孔の開口を促進する(美濃ら 1987)。この毒素産生遺伝子はpCOR1プラスミド上にあることが知られ、このプラスミドを失うと病原性も失い、特定の処理をしたpCOR1はこのプラスミドを持たない非病原性菌株に移動して毒素産生遺伝子が菌株間で伝達されることが報告されている(佐藤ら 1983, 1986, 1988)。本病は牧草の栄養成分に大きな影響を及ぼし、罹病程度が進むと繊維成分、乾物率、リグニン含量が増加し、可溶性糖類、粗脂肪、粗蛋白、可消化養分総量が減少する(井澤 1983d)。

防除法:品種間の抵抗性差異を検定するための効率的な幼苗および圃場検定法が開発され、これにより幾つかの抵抗性品種が選定されている(松本・杉山 1983)。ライグラスのネオティフォディウム・エンドファイト感染個体の抵抗性増強効果は認められていない(島貫ら 1999a, 1999b)。


畜産研究部門(那須研究拠点)所蔵標本

標本番号 宿主和名 宿主学名 症状 採集地 採集年月日 採集者
N5-32 イタリアンライグラス Lolium multiflorum Lam. かさ枯病 茨城県友部町(茨城畜試) 1966.11 菅原 毅
N4-99 千葉市青葉町(畜試) 1966.6.7 西原夏樹
N4-123 防府市? 1966.4.10
N4-125 千葉当場 1966.6.17
N4-126 友部 1966.6.23
N5-31 ペレニアルライグラス Lolium perenne L. かさ枯病(Helmintho?) 宮城 種畜 1972.9.5
N21-79 かさ枯病 大笹原 1972.9.29
N21-114 栃木酪試 1972.9.11

(月星隆雄,畜産研究部門,畜産飼料作研究領域,2021)


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