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黒毛和種肥育牛への圧ペン飼料米給与は最大33%の代替給与が可能

[要約]

黒毛和種肥育牛へ肥育全期間または出荷前5ヵ月間に蒸気圧ペン籾米を原物重量比で配合飼料の最大33%を代替給与しても、大豆粕等で蛋白質を補給することにより、採食量、枝肉重量、脂肪交雑等に有意な差はない。

[キーワード]

蒸気圧ペン籾米、べこあおば、肥育牛

[担当]

宮城県畜産試験場酪農肉牛部

[代表連絡先]

電話0229-72-3101

[区分]

東北農業・畜産飼料作

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

本県は全国有数の飼料用米生産県となっているが、黒毛和種肥育牛への飼料用米給与情報は少ない。本試験では、濃厚飼料に対する飼料用米の代替率を最大33%まで高める給与技術を開発するとともに、飼料用米の多給が肥育牛の発育、枝肉格付成績、肉質等へ及ぼす影響を検討し、飼料用米給与による肥育技術体系を確立する。

[成果の内容・特徴]

  1. 黒毛和種肥育牛へ肥育全期間または肥育出荷前5ヵ月間に蒸気圧ペン籾米(品種:べこあおば)を原物重量比で市販配合飼料の最大33%代替給与(表1)しても、市販配合飼料給与(対照区)に比べて、肥育牛の採食量、枝肉重量、枝肉格付成績(BCS No.を除く)に有意差はない(表2)。
  2. 牛肉の脂肪酸組成では、おいしさに影響するオレイン酸や一価不飽和脂肪酸(MUFA)に有意差はない(表3)。
  3. 牛肉の消費者型官能評価において、肥育出荷前5ヵ月間の蒸気圧ペン籾米33%代替区は、対照区に比べて「甘い香り」の評価が有意に高い(図1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本研究で使用した蒸気圧ペン籾米は、F 社(仙台市)の飼料である。この蒸気圧ペン籾米の利用には、大豆粕など蛋白質成分の高い飼料を併用し、肥育牛の養分要求率を充足させる必要がある。
  2. 本研究の給与飼料(原物比)は、9から10 ヵ月齢まで市販の育成配合飼料(TDN70%、CP19%)を、11 ヵ月齢以降は切替期間を3ヵ月間とし、市販の肥育配合飼料(TDN70%、CP12%)を給与。また補助飼料として脱水ビール粕(水分67%、CP7%、TDN18%)またはビール粕主体の市販混合飼料(水分40%、CP9.5%、TDN50%)を給与。粗飼料は12 ヵ月齢までイタリアンライグラス及びオーチャードグラスのラップサイレージを、それ以降は乾燥稲ワラへ切り替えている。
    なお、本研究の肥育全期間は11 ヵ月齢から出荷月齢(平均27 ヵ月齢)まで、一方、肥育出荷前5ヵ月間は25 ヵ月齢から出荷月齢(平均29 ヵ月齢)まで、蒸気圧ペン籾米を給与している。
  3. 蒸気圧ペン籾米を原物重量比で市販配合飼料の33%代替する給与方法は、配合設計や個体などによっては採食量に影響を及ぼす可能性があるため、慣らし給与期間を十分取るなどして注意する。

[具体的データ]

(齋藤陽介、渡邉智、沼邊孝、鈴木秀彦、石黒裕敏)

[その他]

研究課題名
黒毛和種肥育牛への飼料用米給与技術及び肉質評価法の開発
予算区分
委託プロ(低コストプロ)
研究期間
2010〜2014 年度
研究担当者
齋藤陽介、渡邉智、沼邊孝、鈴木秀彦、石黒裕敏