研究所トップ≫研究成果情報≫平成27年度
山形県の野菜栽培における牛ふん堆肥施用に伴う一酸化二窒素発生量
[要約]
山形県内の細粒質普通灰色台地土において、野菜栽培時の投入窒素量から揮散する一酸化二窒素(N2O)の割合(排出係数)は、牛ふん堆肥施用で0.74%、化学肥料施用で0.99%であり、牛ふん堆肥の肥効分を減肥した栽培の排出係数は化学肥料単用と変わらず収量は同等である。
[キーワード]
温室効果ガス、一酸化二窒素(N2O)、堆肥施用、畑地、野菜栽培、排出係数
[担当]
山形県農業総合研究センター・食の安全環境部
[代表連絡先]
電話023-647-3500
[区分]
東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
農業分野で問題となっている温室効果ガスのひとつである一酸化二窒素(N2O)は、肥料や堆肥を施用することで発生し、温室効果の程度を示す温暖化係数は二酸化炭素(CO2)の265 倍(IPCC 第5 次報告書、フィードバック効果なしの値)と高いことから、その削減対策が求められている。堆肥を用いることで化学肥料と組み合わせた減肥栽培等によるN2O 排出削減効果や、炭素貯留効果による地球温暖化緩和策の効果が期待されることから、ここでは堆肥を用いた野菜栽培畑からのN2O 発生量を把握し、地球温暖化対策技術の構築に向けた基礎資料とする。
[成果の内容・特徴]
- 2010 年秋作〜2014 年春作の期間中において、キャベツ及びはくさいを栽培した畑からのN2O 年間発生量は、牛ふん堆肥区で451〜996 mgN2O-N/平方メートル、化学肥料区で574〜1,324 mgN2O-N/平方メートル、無窒素区では118〜607 mgN2O-N/平方メートルであり、年次による幅がみられる(図1、表2)。
- 2010 年秋作〜2014 年春作の各年次におけるN2O 排出係数の平均値(±SD)は、牛ふん堆肥0.74(±0.13)%、化学肥料0.99(±0.31)%であり、牛ふん堆肥のみを施用した栽培では収量は化学肥料より低い(表2)。
- 牛ふん堆肥の肥効分を減肥したキャベツ栽培は、化学肥料を単用した栽培と収量が変わらず、N2O 排出係数は同等である(表3)。
- 堆肥施用により有機物炭素として畑に投入されるCO2 当量は、N2O として大気中に放出されるCO2 当量よりも大きい(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 山形市の定点(細粒質普通灰色台地土)における2010〜2015 年のN2O 測定結果である。
- N2O フラックスはクローズドチャンバー法を用い、ECD 付きガスクロマトグラフで定量した。
- 使用した牛ふん堆肥は山形県産オガクズ牛ふん堆肥(CN 比16.6〜25.6)である。
[具体的データ]
(山形県)
[その他]
- 研究課題名
- 有機質資材の投入に伴う温室効果ガス(一酸化二窒素)の発生量調査(農地土壌炭素貯留等基礎調査事業「農地管理技術検証」)
- 予算区分
- 国庫
- 研究期間
- 2010〜2016 年度
- 研究担当者
- 原田直樹、塩野宏之、布山美恵、矢野真二
- 発表論文等