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リン酸簡易測定キットと簡易吸光度計による土壌トルオーグリン酸含量測定

[要約]

トルオーグ液による土壌抽出液をリン酸簡易測定キット試薬で発色させ、簡易吸光度計を用いて測定した値は、モリブデン青法により発色させ分光光度計で測定する定法でのトルオーグリン酸含量と高い相関があり、測定の簡便化が図られる。

[キーワード]

可給態リン酸、リン酸簡易測定キット、簡易吸光度計、簡便化

[担当]

福島県農業総合センター・生産環境部

[代表連絡先]

電話024-958-1718

[区分]

東北農業・生産環境(土壌肥料)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

リン酸については 施設畑に限らず水稲、露地野菜等の土地利用型作物圃場でもその含量が蓄積傾向にあり、土壌診断に基づく適正施肥が推進されている。土壌養分の効率的利用により、肥料費の縮減が期待できるため、土壌中のリン酸含量を簡易に測定する方法が求められている。畑土壌については、リン酸簡易測定キットと簡易吸光度計による水抽出リン酸簡易測定法が開発されている(2011年度研究成果情報)。ここでは、抽出液をトルオーグ液とし、既存成果と同様の発色法と測定機器を用いて、水田土壌も対象とできるトルオーグリン酸簡易測定技術を確立する。

[成果の内容・特徴]

  1. 水田、畑土壌28 点(表1)を対象に、トルオーグ液で抽出、濾過した液を水質検査用のリン酸簡易測定キット試薬により発色させLED 式簡易吸光度計を用いて測定(以下、簡易測定)したところ、定法でのトルオーグリン酸含量と高い相関が見られる(図1(発色から300 分経過後のデータは省略)、表2)。
  2. トルオーグリン酸含量80 mg/100g 未満の土壌での測定結果(n=28)から求めた95%予測区間の範囲は±5.29 mg/100g(添加抽出液量1.0 ml、210 分経過後測定での結果)、同様に、30 mg/100g 未満の土壌での測定結果(n=22)から求めた95%予測区間の範囲は±2.57 mg/100g(添加抽出液量2.0 ml、210 分経過後測定での結果)である(図1表2)。
  3. 簡易測定は定法と比較して、測定時の発色試薬の調整が不要であり、あわせて劇物試薬等の使用がない点、測定機器が安価であり、操作・管理が簡便である点に利点がある(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 土壌の可給態リン酸の評価に活用できる。
  2. 今回用いた発色試薬は低濃度リン酸用簡易測定キット((株)共立理化学研究所、WAK-PO4(D)、発色原理:酵素による4-アミノアンチピリン法)、簡易吸光度計はCheckerHCシリーズ吸光度計/リン酸塩(ハンナインスツルメンツ・ジャパン(株)、HI 713型)である。
  3. 今回の簡易測定は次の手順で行った。(1)土壌抽出液はトルオーグ法と同様。(2)抽出した液を吸光度計専用の測定用セルに1.0 mlないし2.0 mlを入れ、蒸留水を約6ml添加。(3)簡易水質検査キット試薬を添加し、セルの10 ml標線まで蒸留水を加え、蓋をして5回程度手振とうを行う(この時点から発色開始)。(4)発色開始から210分ないし300分経過後に簡易吸光度計で測定。測定に際し、蒸留水のみを入れた別の測定用セルによるゼロ点調整を行い、その後発色させたサンプルをセットし、測定ボタンを押した直後に表示される数値を読み取る。
  4. 発色、測定時の室温、液温の影響については未検討である。今回の試験においては室温約21℃の条件下で行った。

[具体的データ]

(福島県)

[その他]

研究課題名
肥培管理支援に関する研究
予算区分
県単
研究期間
2015 年度
研究担当者
中山秀貴、片桐優亮
発表論文等