研究所トップ≫研究成果情報≫平成27年度
アミロースが低く粘りが強い良食味の水稲新品種候補系統「東北210 号」の育成
[要約]
「東北210 号」は宮城県において“中生”の粳種で、アミロース含有率が「ひとめぼれ」より低く、食味は軟らかく、粘りが強く良食味である。耐冷性は“強”、 耐倒伏性が“やや強”で、玄米千粒重が約20g と軽く、収量性は「ひとめぼれ」並から劣る。
[キーワード]
水稲、東北210 号、アミロース、良食味、耐冷性
[担当]
宮城県古川農業試験場・作物育種部
[代表連絡先]
電話0229-26-5105
[区分]
東北農業・稲(稲品種)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
水稲品種の食味改良が進み、全国各地で独自に育成した良食味品種をブランド化する動きが活発化しており、販売面において産地間競争が一層激化している。現在、宮城県では「ひとめぼれ」や「ササニシキ」が作付けの85%以上を占めているが、品種誕生から「ササニシキ」(1963 年育成)が50 年、「ひとめぼれ」(1991 年育成)が20 年以上経過しており、これらの品種に加えて、みやぎ米の美味しさを新たに発信できる良食味品種が望まれていた。そこで、食味に特長がある良食味品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 中生で多収の極良食味の水稲品種の育成を目標に、「東北189 号(げんきまる)」を母、「おぼろづき」由来の低アミロース性を有し、良食味の「東1126」を父に、2006 年に交配し、その後代を選抜、固定を図ってきた系統である(表1)。
- 出穂期と成熟期は「ひとめぼれ」と同程度で、宮城県では“中生”である(表1)。
- 白米のタンパク質含有率は、「ひとめぼれ」と同程度、アミロース含有率は「ひとめぼれ」より低く、「たきたて」より高い11%程度(6.9〜14.2%)である(表1)。
- 炊飯米の食味は、「ひとめぼれ」に比べて、粘りが強く、軟らかく、「たきたて」に比べて、粘りが弱く、硬く、総合評価が高い。炊飯4 時間後の冷飯では、味が良く、粘りが強く、総合評価が高い(表2)。
- 玄米の白濁程度は「たきたて」より弱く、乳白粒が少ないため、玄米品質は「ひとめぼれ」より優れる(写真1、表1)。
- 稈長は「ひとめぼれ」と同程度、穂数は少なく、草型は“中間型”である(表1)。
- 精玄米重は標肥区では52.4kg/a と「ひとめぼれ」並だが、多肥区では「ひとめぼれ」対比92%と低い。
- 玄米千粒重が20.2g で、「ひとめぼれ」より約2g 軽い。粒厚分布は、「ひとめぼれ」より薄い粒厚(2.0〜2.1mm)の割合が増加する(表1、図1)。
- 障害型耐冷性は、「ひとめぼれ」と同じ“強”、耐倒伏性は「ひとめぼれ」に優る“やや強”である(表1)。脱粒性は“難” 、穂発芽性は“やや難”である。
- いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pib”と推定され、葉いもち、穂いもち圃場抵抗性はともに“不明”である(表1)。
[普及のための参考情報]
- 普及対象:宮城県内
- 普及予定地域・普及予定面積:山間高冷地を除く宮城県全域 6,000ha
- その他:いもち病は、圃場抵抗性が不明であるが、親和性レースが優占した場合は罹病化する可能性があるので、発病を確認したら適宜防除に努める。
[具体的データ]
(宮城県古川農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 水稲品種の育成(県単)、耐冷性やいもち病抵抗性を強化した東北オリジナル業務・加工用多収品種の開発(農食事業)
- 予算区分
- 指定試験(2006〜10 年度)、県単・農食事業(2011〜2015 年度)
- 研究期間
- 遠藤貴司、佐伯研一、佐藤浩子、中込佑介、永野邦明、佐々木都彦、千葉文弥、我妻謙介、早坂浩志、酒井球絵(宮城古川農試)
- 研究担当者
- 2016 年度品種登録出願予定。
- 発表論文等