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玄米での食味が優れる巨大胚低アミロース水稲品種「金のいぶき」の採用
[要約]
水稲「金のいぶき」は、胚芽が大きく、玄米中の機能性成分であるGABA やビタミンE 含有量が「ひとめぼれ」の2倍程度と多い。玄米での食味は「ひとめぼれ」より優れる。宮城県ではやや晩生の粳品種である。2015 年度に宮城県の奨励品種に採用する。
[キーワード]
イネ、金のいぶき(東北胚202 号)、巨大胚、良食味、宮城県
[担当]
古川農試・水田利用部
[代表連絡先]
電話0229-26-5106
[区分]
東北農業・稲(稲品種)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
消費者の健康志向の高まりから、機能性成分を多く含む食品への関心が高まっている。玄米は、白米よりも栄養価が高いことが知られているが、食味が優れない等の要因から一部での利用にとどまっている。近年、新たに育成された「金のいぶき」は、低アミロース性をもつ良食味の巨大胚品種である。耐冷性にも優れ、実需者からの要望があることから東北地域で栽培されており、発芽玄米として商品化される事例もみられるため、今後も需要の拡大が見込まれる。そこで、多様なニーズに応じた米の生産振興を図るため、「金のいぶき」を宮城県の奨励品種に採用する。
[成果の内容・特徴]
- 出穂期は「ひとめぼれ」、「たきたて」より3日程度遅く、成熟期は「ひとめぼれ」、より8日程度、「たきたて」よりも5日程度遅い。宮城県では“中生”である(表1)。
- 稈長は「ひとめぼれ」並〜やや長く、「たきたて」並〜やや短い。穂長は「ひとめぼれ」や「たきたて」より長い。穂数は「ひとめぼれ」並で「たきたて」より多い(表1)。
- 耐倒伏性は「ひとめぼれ」並〜やや優れる。葉いもちの発生は「ひとめぼれ」並である(表1)。
- 収量性は「ひとめぼれ」並〜やや劣り、「たきたて」よりも劣る(表1)。
- 千粒重は「ひとめぼれ」、「たきたて」並である。玄米外観品質は「ひとめぼれ」、「たきたて」より劣る(表1)。
- 胚芽が大きく、玄米中の機能性成分であるGABA(γ−アミノ酪酸)やビタミンE(α−トコフェロール)の含有量は「ひとめぼれ」の2倍程度と多い(図1、図2)。
- 玄米の食味は、「ひとめぼれ」より味がよく、軟らかい。また、「たきたて」並の粘りがある。総合評価は「ひとめぼれ」より優れる(表2)。
[普及のための参考情報]
- 普及対象:宮城県内
- 普及予定地域・普及予定面積:山間高冷地帯を除く宮城県下一円に200ha
- 品種特性は、平成23 年度東北農業試験研究成果情報(低アミロースで良食味の巨大胚水稲新品種候補「東北胚202 号」の育成)を参照のこと。
- いもち病抵抗性は葉いもちが“中”、穂いもちが“やや弱”であるため、適正防除を実施する。
- 過剰な生育により倒伏し減収する場合があるため、適正な肥培管理に努める。
- 種子予措は、比重1.00(水選)による比重選および薬剤消毒による種子消毒が最適であり、播種量は苗立ち本数やマット強度の面から「ひとめぼれ」の1.2〜1.3 倍が適する(酒井ら2013)。
[具体的データ]
(宮城県古川農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 水稲奨励品種決定調査
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2012〜2015 年度
- 研究担当者
- 北川誉紘、門間由美子、猪野亮、佐藤泰久
- 発表論文等
- 2015年度宮城県奨励品種採用予定