研究所トップ≫研究成果情報≫平成27年度
短稈・良食味・高品質の水稲新品種「山形112 号」の育成
[要約]
「山形112 号」は、育成地では“中生の晩”の粳種で、「はえぬき」と比較し、稈長は並の短稈で、玄米千粒重は重く、収量性は並である。玄米の外観品質は、背腹白粒の発生が少なく高品質で、食味は優る良食味である。
[キーワード]
イネ、山形112 号、短稈、良食味、高品質
[担当]
山形県農業総合研究センター水田農業試験場・水稲部
[代表連絡先]
電話0235-64-2100
[区分]
東北農業・稲(稲品種)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
米の消費量が減少し価格が低迷している中で、消費者の良食味米志向は根強く、生産者からは、晩生の「つや姫」に続く良食味で、山形県内の主力となる中生品種の開発が要望されている。また、近年、登熟期の高温による米の外観品質の低下が問題となっており、平坦地向けでは高温耐性があり良質な品種が要望されている。消費者ニーズおよび生産者ニーズに対応した高温登熟条件下でも外観品質が低下しにくく食味が優れる“中生の晩”の品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 「山形112 号」は、中生の良質・良食味品種の育成を目標に、「山形80 号」を母、「山形90 号」を父として2003 年に人工交配を行ない、その後代から育成された品種である。
- 出穂期、成熟期とも「はえぬき」並で、育成地では“中生の晩”に属する粳種である(表1)。
- 稈長は「はえぬき」並の“短稈”で、穂長は並、穂数は多い。草型は“偏穂数型”で、耐倒伏性は「はえぬき」並の“強”である(表1)。芒は先端のみに生じ、芒の長さは“短”で、頴色は“黄白”、ふ先色は“白”である。
- いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia,Pii”と推定され、圃場抵抗性は葉いもちが“やや強”で、穂いもちは“強”である。障害型耐冷性、穂発芽性は“中”、高温耐性は“やや強”である(表1)。
- 玄米千粒重は「はえぬき」より重く、収量性は並である。玄米の外観品質は、背腹白粒の発生が少なく、「はえぬき」を上回る高品質である(表1、図2)。
- 食味は炊飯米の光沢、外観、白さ、味が優れ、「はえぬき」に優る良食味である(表1、図1)。
- 白米アミロース含有率は「はえぬき」よりやや高く、白米粗蛋白質含有率は並であり、味度値は高い(表1)。
- 直播栽培における収量性は「はえぬき」並で、玄米の外観品質は優る(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 普及対象:山形県内の生産者
- 普及予定地域・普及予定面積:山形県内平坦地域・一般作付け初年目2,000ha。
- その他:短稈で倒伏しにくいが、良質・良食味米の生産のため、多肥栽培を避ける。
[具体的データ]
(山形県農業総合研究センター水田農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 第V期水稲主力品種の育成
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2003〜2014 年度
- 研究担当者
- 本間猛俊、中場勝、鈴木隆由輝、阿部洋平、渡部貴美子、結城和博、佐野智義、後藤元、渡部幸一郎、森谷真紀子、佐藤久実、水戸部昌樹、齋藤信弥、齋藤寛、齋藤久美
- 発表論文等
- 1)中場ら(2015)育種学研究、17(別2):25
- 2)中場ら(2016)山形農業研報、8:11-43