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長期無追肥育苗によるキャベツ一斉収穫時の結球重の斉一性向上

[要約]

キャベツ栽培において、長期無追肥育苗(育苗45 日間程度)によって定植時の苗質が揃い、定植約1 ヶ月後の生育は慣行育苗と変わらず、収穫時の結球重の斉一性が向上するため、機械収穫を想定した一斉収穫時の加工用出荷率が向上する。

[キーワード]

キャベツ、斉一性、長期無追肥育苗、機械収穫

[担当]

宮城県農業・園芸総合研究所・バイオテクノロジー開発部

[代表連絡先]

電話022-383-8131

[区分]

東北農業・野菜花き(野菜)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

宮城県沿岸部では2011 年に発生した東日本大震災以降に、露地園芸作物の産地形成への取り組みが一層強まっており、その中でも加工・業務用キャベツの機械化一貫体系が注目されている。しかし、その核となるキャベツ収穫機を利用する場合、一斉収穫となるため、収量確保には慣行の手収穫よりも収穫物の斉一化が求められる。そこで、キャベツ栽培において一斉収穫した場合の加工用出荷率を向上させる技術のひとつとして、長期無追肥育苗による結球重の斉一性向上技術を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. 定植時の苗質は、長期無追肥育苗では慣行育苗と比較して本葉数が多く、地際茎径が太く、草高を含めていずれの変動係数も小さく、苗質の揃いが向上する。また、長期無追肥育苗によって慣行育苗よりも葉緑素量は減少する(表1)。
  2. 定植後の生育は、定植約1ヶ月後の葉数、展開第10 葉の葉緑素量、正常株率が同程度、最大草幅と展開第10 葉の葉長が長期無追肥育苗で大きくなり、長期無追肥育苗による生育量の減少はみられない(表2)。
  3. 一斉収穫時の結球重は、長期無追肥育苗のほうが慣行育苗よりも変動係数が小さくなり、結球重の斉一性は向上する。結球重の平均値は同程度であり、結球重の下限値を1.2kg に設定した場合の加工用出荷率は向上する。また、結球緊度(球の固さ)、芯の割合は差がない(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本成果は、2014 年、2015 年春作は宮城県名取市の露地ほ場(土性:褐色森林土)で品種「藍天」、秋作は宮城県岩沼市の露地ほ場(土性:砂壌土、2011 年東北地方太平洋沖地震の津波により海水、土砂等が流入した農地)で品種「彩音」を用いて行った結果である。
  2. 長期無追肥育苗は、市販育苗培土(商品名「くみあいセル専用N100」、N100mg/L)を充填した黒セルトレイ128 穴に1セル1粒まきとし、パイプハウス内の棚上で育苗する。育苗期間は概ね45 日間程度(2014 年春作は3月11 日播種、4月21 日定植の42 日間、秋作は7月9日播種、8月25 日定植の48 日間、2015 年春作は3月4 日播種、4月24日定植の50 日間)、育苗期間中はかん水のみとし、追肥は行わない。
  3. 慣行育苗は、長期無追肥育苗と同様の育苗方法であるが、育苗期間中はかん水の他、追肥として育苗開始20 日後から液肥(セルトレイ1枚当たり窒素成分量71mg)を施用する。育苗期間は概ね25 日程度とする(2014 年春作は3月25 日播種、4月21 日定植、2014年は8月1日播種、8月25 日定植、2015 年春作は3月26 日播種、4月24 日定植)。
  4. 栽培条件は、春作は10a 当たり栽植株数は5,478 株(畝幅60cm、株間30cm)、秋作は10a 当たり栽植株数は4,554 株(畝幅60cm、株間36cm)、本ぽ施肥量は基肥N、P2O5、K2O各20kg/10a、追肥N、K2O 各5kg/10a である。

[具体的データ]

(宮城県農業・園芸総合研究所)

[その他]

研究課題名
露地園芸技術の実証研究
予算区分
食料生産地域再生のための先端技術展開事業、県単
研究期間
2013〜2015 年度(先端プロ)、2014〜2015 年(県単)
研究担当者
澤里昭寿、大森紀代美、佐藤浩子