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イチゴ超促成栽培におけるクラウン温度制御を用いた増収効果

[要約]

イチゴ「とちおとめ」、「もういっこ」を夜冷短日処理した苗を8 月中・下旬に定植し、クラウン温度制御を行うことで冷却効果により第1次腋花房の開花が早まり、頂花房の果実肥大が促進される。また冷却・加温効果により商品果収量が向上する。

[キーワード]

イチゴ、超促成栽培、クラウン温度制御、果実肥大

[担当]

宮城県農業・園芸総合研究所・園芸栽培部

[代表連絡先]

電話022-383-8132

[区分]

東北農業・野菜花き(野菜)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

復興地域ではイチゴの高位安定生産を早期に確立するため、新たな技術の導入と展開が図られている。そこで、寒冷地で有利と考えられる超促成栽培において、クラウン温度制御を組み合わせて10 月から翌年6月まで連続収穫することを目的として、クラウン部の冷却と加温がイチゴの生育と収量に及ぼす影響について明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 夜冷短日処理により8月中旬に定植し、定植日から20℃程度の水を利用したクラウン温度制御(冷却・加温)を行うと、クラウン温度制御無しと比較して、第1次腋花房の開花が「とちおとめ」で8日程度、「もういっこ」では11 日程度開花が早くなる。同じく8月下旬定植では、第1次腋花房の開花が「とちおとめ」で14 日程度、「もういっこ」では15〜24 日程度開花が早くなる(表1)。
  2. 8月中・下旬定植の超促成栽培の「とちおとめ」、「もういっこ」において、20℃程度の水を利用したクラウン温度制御(冷却)を行うことで頂花房第1果の痩果数と1果重は増加する(表2)。
  3. クラウン温度制御(冷却・加温)することでa 当たり商品果収量は増加する(表1)。また「とちおとめ」では1 月の収量の減少は軽減する(図1)。
  4. 「もういっこ」では、夜冷短日処理により8月下旬に定植し、20℃程度の水を利用したクラウン温度制御(冷却・加温)を行うことで、4〜6月の商品果収量がクラウン温度制御無しと比較して27〜39%向上する(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. クラウン温度制御は、クラウン部にポリエチレンチューブを沿わせ、定植日から9月30 日までユニットクーラーで20℃程度に冷却した水を通水して行った。10 月下旬〜3月上旬までは、サーモヒーターで20℃程度に加温し、通水した。ただし、3月以降のクラウン温度制御は、ハウス内温度条件に留意して設定を加減する。通水は24 時間連続通水とした。
  2. 栽培様式は、高設宮城型養液システム(やしがら培地)、栽植密度800 株/a。養液EC0.4〜0.8mS/cm、200ml〜500ml/4〜5回/日をタイマーで管理。ハウスは2重カーテン設置、8℃で加温。電照は10 月下旬〜2月下旬まで1〜4時間(日長延長)行った。収穫期間は10 月〜6月下旬とした。

[具体的データ]

(宮城県農業・園芸総合研究所)

[その他]

研究課題名
イチゴの低温処理および局所温度管理による花房形成と草勢制御および総合環境制御による収量・品質の安定化技術の開発
予算区分
食料生産地域再生のための先端技術展開事業(先端プロ)
研究期間
2012 年〜2017 年
研究担当者
高山詩織、鹿野弘、高野岩雄